売掛金の回収が止まった時の動き方|入金遅延を何度も経験した代表が解説
売掛金の回収が止まったら、最初の72時間の動き方で結果が大きく変わります。任意督促・内容証明・支払督促・少額訴訟を日数で区切り、並行して貸倒損失の仕訳と早期現金化(ファクタリング・ABL・売掛金保証)の選択肢を握る型を、私自身が実務で使ってきました。
私自身、創業以来「払うと言っていた取引先からの入金が来ない」状況を何度も経験しました。手元残高100万を切った時期もあり、回収プロセスは感情で動かさず手順で動かす以外に方法はないと痛感しています。
この記事では、入金遅延日数別の行動フロー、督促状・内容証明の書き方、法的手続きの費用と期間、貸倒損失の仕訳(国税庁基準)、そして回収を待たずに資金化する方法までを、現役経営者の視点で整理しました。
売掛金の回収とは?まず押さえる3つの基本
売掛金の回収とは、商品・サービスの提供後に発生した代金債権を、契約上の支払期日に現金として回収する作業を指します。請求書発行→入金確認→消し込み、までが1サイクルです。
売掛金の回収サイクル(請求→入金)
一般的な売掛金回収サイクルは、月末締め・翌月末払いや、月末締め・翌々月末払いが多く、入金サイトは30日〜60日が中心です。建設業や下請取引では90日以上のサイトもあります。
請求書を発行したら、入金予定日を売掛金台帳に登録し、当日に銀行口座を確認して消し込みます。消し込みが漏れると、二重請求や未回収の見落としにつながります。
入金遅延が経営に与える影響
入金が1日遅れただけで、自社の支払い・給与・税金の引き落としに連鎖します。手元現金が薄い中小企業ほど、1社の遅延が連鎖倒産のトリガーになります。
売上が伸びていても現金が回らずに倒産する「黒字倒産」の多くは、売掛金の回収遅延・回収不能が原因です。利益と現金は別物だという感覚を持っておくのが大切です。
回収方法は4階層で整理できる
売掛金の回収手段は、以下の4階層で整理すると判断しやすくなります。
最初から階層3〜4に飛ぶと費用対効果が悪く、最後まで階層1で粘ると時効や倒産でゼロになります。「日数で次の階層に上がる」のが鉄則です。
入金遅延日数別の対応フロー
「相手から連絡がない」状態で漫然と待つのが、最も回収率を下げる行動です。遅延日数別に、誰が何をやるかを決めておきます。
1〜7日目: 入金確認と社内チェック
期日当日と翌営業日に銀行口座を確認します。入金がなければ、まず自社の請求書送付ミス・振込先口座の記載ミスがないかをチェックします。経理担当が「請求書のPDFを再送し、入金状況の確認を依頼するメール」を相手の経理担当宛てに送ります。
ここではトーンを荒げないのが鉄則です。実務では、相手側のシステム障害・担当者不在・請求書見落とし、といったケアレスミスが3〜4割を占めます。
8〜30日目: 任意督促(電話・メール)
10日を過ぎたら、電話で直接連絡します。経理担当が出ない場合は、営業窓口や代表番号に切り替えます。「いつ支払えるか」を口頭で確認し、その内容をメールに残します。
メールでの記録は、後で内容証明や法的手続きに進む際の証拠になります。「◯月◯日に△△様より、××日までに振込との回答をいただきました」と、固有名詞と日付を残します。
31〜60日目: 督促状の郵送
30日を超えても入金がなければ、書面で督促状を郵送します。記載項目は、請求書番号・請求金額・支払期日・支払期限(再設定)・連絡先・振込先口座の6項目です。
普通郵便で構いませんが、配達記録郵便(書留より安価)にしておくと、相手に届いた日付が記録されます。
61〜90日目: 内容証明郵便
60日を超えたら、内容証明郵便+配達証明をセットで送ります。内容証明は「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明する仕組みで、後の裁判や時効更新の証拠として使えます。
内容証明を送ると、相手の社内で「払わないと法的措置を取られる」というプレッシャーがかかります。実務では、ここで支払いに応じる取引先も少なくありません。
91日目〜: 法的手続きの検討
3ヶ月以上、まったく支払いの動きがない場合は、法的手続きに切り替えます。手続きの選択肢は、支払督促・少額訴訟・民事調停・通常訴訟の4つです。金額・関係性・スピードで使い分けます。
3ヶ月を超えると、相手の経営状態が悪化している可能性も高まります。倒産する前に法的手段で債務名義を取り、差押えの優先順位を確保するのが現実的な判断になります。
私が一番効いたと感じたのは、「期日が過ぎたら何日目に何をやるか」をあらかじめ社内ルールにしておくことです。感情で動こうとすると、声を荒げて関係を壊すか、逆に遠慮しすぎて時効まで放置するか、どちらかに振れがちです。私自身、最初は遠慮して時効ギリギリまで動けなかった経験があります。
任意督促のやり方(電話・メール・督促状)
法的手続きに進む前の「任意督促」で回収できれば、取引関係も維持しやすく、コストも最小で済みます。
電話督促の基本トーン
電話督促は、責める口調ではなく事務的な確認の口調で行います。「請求書の振込が確認できておりません。お手数ですが、入金予定日をご教示いただけますか」というのが基本の言い回しです。
電話の最後には、「では◯月◯日までにお振込みいただけるということで、確認のメールをお送りいたします」と、回答内容をメールで送り直す約束を取り付けます。
メール督促のテンプレート
メール督促は記録が残るので、督促の主軸として使えます。以下が実務で使えるテンプレートの一例です。
件名: 【ご確認のお願い】◯月分請求書(請求書番号: INV-XXXX)のお支払いについて
>
株式会社◯◯ 経理ご担当者様
>
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
>
標題の請求書につきまして、お支払期日◯月◯日を過ぎておりますが、現時点でご入金の確認が取れておりません。
>
行き違いでご対応中の場合はご容赦ください。請求書を添付いたしますので、お振込予定日をご返信いただけますと幸いです。
>
ご不明点がございましたら、本メールにご返信ください。
>
よろしくお願い申し上げます。
件名に「請求書番号」を入れること、本文に「期日・金額・振込先」を再掲することで、相手の経理担当が動きやすくなります。
督促状の書き方と記載項目
督促状(書面)は、メール督促で返答がない時に紙で送ります。記載項目は次の9項目です。
- 文書発行日
- 宛先(取引先正式名称・代表者または経理担当者名)
- 自社情報(社名・住所・代表者名・印鑑)
- 請求書番号
- 請求金額(税込)
- 当初の支払期日
- 再設定する支払期限
- 振込先口座
- 連絡先(電話・メール)
文末は「上記期日までにお振込みのない場合は、内容証明郵便による催告および法的手続きを検討いたします」と、次の段階を匂わせる一文を入れます。
督促時にやってはいけないこと
督促時のNG行動は、回収率を下げるだけでなく、自社が違法行為に問われるリスクもあります。
- 深夜・早朝の電話(午後9時〜午前8時を避ける)
- 取引先の自宅・家族への督促
- 大声・恫喝・人格否定
- SNS・公開の場での晒し行為
- 「払わないと取引先全部に知らせる」等の脅迫
特に、貸金業法・債権管理回収業法は悪質な取り立てを規制しており、商取引でも同様の常識的範囲で対応する必要があります。
内容証明郵便の効果と書き方
任意督促で動きがない場合の次の一手が、内容証明郵便です。郵便局のシステムを使った正式な督促文書で、後の裁判や時効更新の証拠としても機能します。
内容証明郵便とは
内容証明郵便は、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれる郵便サービスです。配達証明をセットで付けると、「いつ相手に届いたか」も証明できます。
費用は内容証明料金480円+書留料金480円+配達証明料金350円+基本郵便料金で、おおむね1,500円前後です(金額は日本郵便「内容証明」で最新版を確認してください)。
文例と必須記載事項
内容証明郵便には、書式の制約があります(1枚あたり26行×20字または13行×40字など)。一般的な文例は次のとおりです。
催告書
>
令和◯年◯月◯日 〒XXX-XXXX 東京都◯◯ 株式会社◯◯ 代表取締役◯◯ 殿
>
〒XXX-XXXX 東京都△△ 株式会社△△ 代表取締役△△
>
貴社は当社に対し、令和◯年◯月◯日付請求書(請求書番号 INV-XXXX)に基づく売掛金 金XXX,XXX円の支払債務を負担しております。
>
しかしながら、支払期日である令和◯年◯月◯日を過ぎても、本日に至るまでお支払いがありません。
>
つきましては、本書面到達後7日以内に上記金額を下記口座にお振込みくださいますよう、ご請求いたします。
>
上記期限までにお支払いがない場合は、法的手続きを取ることもやむを得ませんので、ご承知おきください。
>
振込先: ◯◯銀行 ◯◯支店 普通預金 XXXXXXX
末尾の「法的手続きを取ることもやむを得ない」という文言が、相手にとっての心理的プレッシャーになります。
配達証明をセットにする理由
内容証明単独では「文書を発送した事実」しか証明されず、「相手に届いた日付」までは記録に残りません。配達証明をセットで付けると、相手の手元に届いた日付を郵便局のスタンプで証明できます。
この「届いた日付」が、後で時効の起算点を主張する際の重要な証拠になります。費用差は350円なので、必ずセットにします。
時効の完成猶予(6ヶ月)の効果
内容証明郵便で「催告」をすると、民法150条により時効の完成が6ヶ月猶予されます。時効が迫っているケースでは、まず内容証明を出して6ヶ月の余裕を作り、その間に支払督促や訴訟の準備をする、という使い方ができます。
ただし、内容証明だけでは時効の「更新」(リセット)にはなりません。完全に時効を更新するには、支払督促・調停・訴訟など、裁判所を介した手続きに進む必要があります。
法的手続きで回収する4つの方法
任意督促・内容証明でも動かない場合の法的手続きは、4種類あります。金額・関係性・スピードで選びます。
支払督促(簡裁・印紙安・スピード重視)
支払督促は、債権者の申立てを受けて、簡易裁判所の書記官が債務者に支払いを命じる手続きです。相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 相手住所地の簡易裁判所 |
| 印紙代 | 訴訟手数料の半額(例:10万円なら500円) |
| 期間 | 申立てから2〜4週間で支払督促発令 |
| 異議申立て | 相手が2週間以内に異議を出すと通常訴訟に移行 |
メリットは、印紙代が安く、相手の出頭が不要なため早期に債務名義(強制執行の前提となる書類)を取得できる点です。デメリットは、相手が異議を出すと通常訴訟に移行する点です。詳しい手続きは裁判所「支払督促手続」を確認してください。
少額訴訟(60万円以下・1日で判決)
少額訴訟は、60万円以下の金銭支払いを求める訴訟で、原則1回の期日で判決が出ます。請求額が小さく、証拠が揃っているケースに向いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 60万円以下の金銭請求 |
| 印紙代 | 請求額に応じて1,000円〜6,000円程度 |
| 期間 | 1回の期日(数時間)で判決 |
| 注意点 | 相手が通常訴訟への移行を求めると通常訴訟に切り替わる |
少額訴訟は、同じ簡易裁判所で年間10回までの利用回数制限があります。
民事調停(話し合い型)
民事調停は、裁判所の調停委員を介して話し合いで解決を図る手続きです。判決ではなく合意ベースで進むため、取引関係を維持したい場合に向いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 相手住所地の簡易裁判所 |
| 印紙代 | 請求額に応じて訴訟の半額程度 |
| 期間 | 2〜3ヶ月で1回〜複数回の期日 |
| 注意点 | 相手が出頭しない場合は不成立になることもある |
調停成立時の調停調書は、判決と同じ強制執行力を持ちます。
通常訴訟(金額大・長期戦)
通常訴訟は、請求額の制限なく利用できる正式な裁判手続きです。金額が大きく、相手が争う姿勢を見せている場合に選択します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 140万円以下:簡裁、140万円超:地裁 |
| 印紙代 | 請求額に応じて数千円〜数十万円 |
| 期間 | 半年〜1年以上 |
| 弁護士費用 | 着手金10〜30万円+成功報酬(回収額の10〜20%)が目安 |
通常訴訟は、弁護士に依頼するケースが多くなります。費用対効果を考えると、請求額が100万円を下回る場合は支払督促・少額訴訟の方が現実的です。
強制執行(債務名義取得後)
法的手続きで判決・調停調書・支払督促を得ても、相手が支払いに応じなければ強制執行に進みます。差押えの対象は、預金・売掛金(相手の取引先からの債権)・動産・不動産です。
預金差押えは、相手の取引銀行・支店が特定できていないと空振りに終わります。実務では、契約書・振込履歴から推定して申し立てます。
売掛金回収にかかる費用と期間の比較表
回収手段ごとの費用・期間・回収率の目安を整理します。「何から始めるか」の判断材料に使ってください。
手段別の費用・期間・回収率の目安
| 手段 | 費用(実費) | 期間 | 回収率の目安 | 関係性への影響 |
|---|---|---|---|---|
| 電話・メール督促 | ほぼ0円 | 即日〜2週間 | 高い(30日以内) | 維持しやすい |
| 督促状(書面) | 数百円 | 1〜2週間 | 中程度 | 軽い緊張 |
| 内容証明郵便 | 約1,500円 | 1週間 | 中〜低 | 緊張 |
| 支払督促 | 印紙500円〜 | 2〜4週間(異議なし) | 中(判決後) | 関係終了の可能性 |
| 少額訴訟 | 印紙1,000円〜 | 1〜2ヶ月 | 中(判決後) | 関係終了 |
| 民事調停 | 印紙500円〜 | 2〜3ヶ月 | 中(合意できれば高) | 維持の余地あり |
| 通常訴訟 | 数千円〜数十万円 | 半年〜1年 | 中(判決+執行で確定) | 関係終了 |
| 強制執行 | 数万円〜 | 1〜3ヶ月 | 預金特定なら高 | 関係終了 |
回収率は、相手の支払能力・債権額・証拠の有無に大きく左右されます。「内容証明を出した時点で諦めて自己破産する取引先」もいれば、「判決が出ても払わない」相手もいます。
弁護士費用の相場(着手金・成功報酬)
弁護士に依頼する場合の費用相場は、おおむね次のとおりです(旧日弁連報酬基準ベース)。
| 請求額 | 着手金 | 成功報酬 |
|---|---|---|
| 〜300万円 | 経済的利益の8%(最低10万円) | 経済的利益の16% |
| 300万〜3,000万円 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
| 3,000万〜3億円 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
事務所により金額は異なります。少額の場合は最低着手金が10万〜20万円となり、回収額より弁護士費用が上回るリスクもあります。
自社対応 vs 弁護士依頼の判断軸
おおまかな判断軸は次のとおりです。
- 100万円未満: 自社で支払督促・少額訴訟を進める方が費用対効果が良い
- 100万〜500万円: 自社+スポット相談(着手金抑制プラン)も検討
- 500万円超 or 複雑な事案: 弁護士依頼を前提に動く
- 時効が迫っている: 金額に関わらず即座に弁護士に相談
売掛金が回収できない時の仕訳(会計処理)
法的手段を尽くしても回収不能と判明した売掛金は、会計上「貸倒損失」または「貸倒引当金」として処理します。仕訳のタイミングは、税務上の要件を満たした事業年度です。
貸倒引当金の設定
貸倒引当金は、将来発生する可能性のある貸倒れに備えて、あらかじめ計上する見積額の引当金です。決算時に債権額の一定割合を引き当てます。
| 仕訳例 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 期末に貸倒引当金を設定 | 貸倒引当金繰入 100,000 | 貸倒引当金 100,000 |
中小企業の場合、業種別の法定繰入率を使って算定する方法と、個別評価で算定する方法があります。
貸倒損失の3区分(法律上・事実上・形式上)
国税庁の通達(No.5320)では、貸倒損失として損金算入できるケースを3区分に整理しています。
1.法律上の貸倒れ
会社更生法・民事再生法・特別清算等の手続きで、債権が法的に切り捨てられた場合。切り捨て決定の通知を受けた事業年度に損金算入します。
2.事実上の貸倒れ
債務者の資産状況・支払能力から、その全額が回収できないと明らかになった場合。担保物がある場合は、担保処分後でなければ計上できません。
3.形式上の貸倒れ(取引停止後1年以上)
継続取引のあった債務者との取引を停止し、取引停止時・最後の弁済時・最後の入金時のいずれか遅い時から1年以上経過した場合。備忘価額として1円を残して、残額を貸倒損失として処理できます。
仕訳例: 貸倒損失/売掛金
回収不能が確定した場合の基本仕訳は、次のとおりです。
| 仕訳例 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 貸倒損失を計上 | 貸倒損失 500,000 | 売掛金 500,000 |
| 貸倒引当金がある場合 | 貸倒引当金 500,000 | 売掛金 500,000 |
引当金を設定済みの場合は、引当金から先に取り崩します。
備忘価額1円を残すケース
形式上の貸倒れ(取引停止後1年以上)で処理する場合は、備忘価額として1円を売掛金に残します。
| 仕訳例 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 形式上の貸倒れ | 貸倒損失 499,999 | 売掛金 499,999 |
1円を残すのは、「債権の存在」を会計上明示し、後日万一回収できた場合の処理を可能にするためです。
回収を待たない選択肢:早期現金化の方法
「相手から払ってもらう」ことだけが回収ではありません。売掛金を売却・担保化することで、回収を待たずに現金化する選択肢もあります。
ファクタリングで売掛金を売却
ファクタリングは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却して、入金期日を待たずに現金化する仕組みです。融資ではなく債権譲渡なので、信用情報に影響しません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現金化までのスピード | 最短即日〜数日 |
| 手数料 | 2社間2〜20% / 3社間1〜10% |
| 必要書類 | 請求書・通帳・本人確認書類など |
| 審査対象 | 売掛先の信用力(自社の業績ではない) |
当サイト掲載のファクタリング会社226社のうち、即日入金対応は148社、個人事業主対応は121社です。資金繰りが逼迫している場面では、回収プロセスと並行してファクタリングを使い、自社の支払いを止めない選択もあります。
当サイトの口コミ423件を読み込んでわかったのは、「期日前に動いた人」と「期日後に焦って動いた人」では、選べる会社の数も手数料も大きく変わるという事実でした。1社1社の手数料・スピード・必要書類を横並びで比較できる環境を整えておくのが、いざという時の判断スピードに直結します。
自社に合うファクタリング会社を選びたい方は、ファクタリング会社ランキングや自分に合うファクタリングを診断を参考にしてください。
売掛債権担保融資(ABL)
ABL(Asset Based Lending)は、売掛金や在庫を担保にして金融機関から融資を受ける仕組みです。融資なので利息は安く、長期の資金繰り改善に向いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現金化までのスピード | 1ヶ月〜 |
| 金利 | 年2〜5%程度 |
| 必要書類 | 決算書3期分・売掛金台帳・在庫管理表など |
| 審査対象 | 自社の信用力+担保価値 |
ABLは金融機関の審査を通る必要があるため、財務状況が悪化している企業には使いにくい側面があります。
売掛金保証サービス(事前対策)
売掛金保証サービスは、取引先が支払不能になった場合に、保証会社が代わりに支払う事前型の備えです。回収不能リスクを保険的にカバーします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイミング | 取引開始時に契約 |
| 保証料 | 売掛金の0.5〜3%程度 |
| 保証範囲 | 取引先の倒産・支払不能 |
| 注意点 | 任意の支払遅延は対象外 |
事前に保証契約を結んでおけば、与信不安のある取引先とも安心して取引できます。
3つの使い分けと向き不向き
ファクタリング・ABL・売掛金保証の使い分けは、次の通り3つの選択肢で整理できます。
注意点として、既に支払期日を過ぎた売掛金(不良債権化したもの)は、原則ファクタリングの買取対象外です。ファクタリングは「これから入金される売掛金」の早期現金化が前提です。
私自身、資金繰りで苦しんでいた当時、ファクタリングを知りませんでした。日本政策金融公庫・地銀・民間ビジネスローン・保証協会付き融資をすべて経験しましたが、書類作成と時間がかかることが一番大変でした。「後から確実に入金される予定がある」状況なら、ファクタリングを併用するという発想を持っておくと選択肢が増えます。
売掛金回収を未然に防ぐ与信管理
そもそも回収トラブルを発生させないために、取引開始時と取引継続中の与信管理が重要になります。
取引開始時の与信チェック
新規取引を開始する前に、相手の信用力を確認します。最低限のチェック項目は次の5つです。
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の取得
- 帝国データバンク・東京商工リサーチの信用調査
- 取引先のWebサイト・SNSの確認
- 既存取引先からのリファレンスチェック
- 初回取引は少額・前金・短サイトから開始
信用調査は1件3,000円〜2万円程度の費用がかかりますが、初回の大型取引前には実施する価値があります。
取引基本契約書・取引条件の整備
取引基本契約書には、支払条件・遅延損害金・期限の利益喪失条項・所有権留保等を明記します。口約束やメール往復だけの取引は、トラブル時に主張できる範囲が狭くなります。
下請取引においては、中小企業庁「下請代金支払遅延等防止法」で支払期日や遅延損害金の規定があるため、適用される場合は法定の支払期日(受領日から60日以内)を守る必要があります。
売掛金台帳と回転期間モニタリング
売掛金台帳は、取引先別・請求書別に未回収金額と滞留日数を一覧化します。エクセル・スプレッドシート・会計ソフトのいずれでも構いません。
売掛金回転期間(売掛金÷月商)が業界平均より長期化していないか、四半期ごとにチェックします。回転期間が伸びている場合は、特定の取引先で滞留が発生している可能性が高いです。
入金サイト短縮の交渉
入金サイト60日を30日に短縮できれば、自社のキャッシュフローは大きく改善します。新規取引の際には30日サイトを基本提示し、相手の希望で延ばす交渉ベースで進めます。
既存取引でも、ファクタリングや手形決済を経由している取引先には、銀行振込への変更とサイト短縮を交渉する余地があります。
売掛金回収に関するよくある質問
売掛金の時効は何年?
商取引で生じた売掛金の消滅時効は、原則5年です(民法166条1項1号、2020年4月1日以降の債権)。2020年3月31日以前に発生した売掛金は、業種別の短期消滅時効(飲食料品の卸売は1年、製造業の代金は2年等)が適用されるケースもあります。詳細は法務省「民法(債権関係)改正・消滅時効」を参照してください。
請求書を出していない売掛金も時効になる?
請求書の発行有無に関わらず、債権の発生時点(商品引渡し・サービス提供完了時)から時効はスタートします。請求書未発行でも、契約書・納品書・メール等で取引事実を立証できれば、時効内は請求可能です。
支払督促と少額訴訟はどちらが向いている?
請求額が60万円以下で、相手が異議を出さない見込みなら支払督促が安く早く済みます。相手が争う姿勢の場合は、最初から少額訴訟(または通常訴訟)の方が確実です。支払督促で相手が異議を出すと通常訴訟に移行するため、二度手間になります。
取引先が倒産した場合の対応は?
取引先が破産・民事再生・会社更生に入った場合は、債権届出書を裁判所に提出して配当を待つ流れになります。配当率は数%程度のケースが多く、貸倒損失として処理する前提で動くのが現実的です。倒産情報は官報や信用調査会社のニュース速報で取得します。
個人事業主の売掛金回収も同じ手順?
基本的に同じ手順です。ただし、相手が個人事業主の場合、財産が事業と個人で混在しており、強制執行時の差押え対象の特定が難しくなる傾向があります。法人取引よりも事前の与信チェックと、契約書での支払条件明記が重要になります。
内容証明郵便だけで時効はリセットされる?
内容証明郵便による催告は、時効の完成を6ヶ月猶予する効果のみで、時効そのものを更新(リセット)する効果はありません。完全に時効をリセットするには、6ヶ月の猶予期間内に支払督促・調停・訴訟など、裁判所を介した手続きへ進む必要があります。民法150条の規定に基づきます。
売掛金を回収する前に貸倒損失で経費計上できる?
原則できません。貸倒損失として損金算入するには、国税庁通達(No.5320)の3区分(法律上・事実上・形式上)いずれかの要件を満たす必要があります。回収努力が不十分なまま貸倒損失計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。
まとめ:回収と現金化を分けて考える
売掛金回収は、「相手から回収する」と「自社の現金を維持する」の2軸で考えると判断がぶれません。
- 相手から回収する軸: 任意督促→内容証明→支払督促/少額訴訟→通常訴訟→強制執行と、日数に応じて階層を上げる
- 自社の現金を維持する軸: ファクタリング・ABL・売掛金保証を併用し、回収プロセスの長期化に耐えられる体制を作る
- 会計処理の軸: 国税庁の3区分(法律上・事実上・形式上)に従って貸倒引当金・貸倒損失を計上する
「相手から払ってもらえるかどうか」だけに気を取られると、自社の資金繰りが先に行き詰まります。回収プロセスを進めながら、ファクタリング等の現金化選択肢を持っておくのが、経営者にとってのリスク管理になります。
売掛金の基礎から学びたい方は売掛金とは?仕訳・勘定科目から解説、資金ショートが目前の方は資金ショートを回避する方法も合わせて確認してください。
