本ページにはプロモーションが含まれています。SESと呼ばれる取引でも、契約内容、指揮命令関係、稼働・検収条件、請求と支払いの条件は案件によって異なります。
SES会社は、エンジニアへ毎月給与を支払い、協力会社やフリーランスにも期日どおり報酬を払う一方、取引先からの入金は稼働報告の承認や請求処理の後になります。稼働人数が増えるほど売上は伸びますが、入金前に必要な運転資金も増えます。
資金繰り改善の第一歩は、売上高ではなく、エンジニア・案件ごとの粗利と、給与・外注支払日から売掛金入金日までに必要な現金を把握することです。
この記事では、SES会社の資金繰りが悪化する原因、必要運転資金の計算、契約・請求の改善、融資・ファクタリングの使い分け、待機人員への対応を解説します。
SES会社は、稼働人数が増えるほど、入金前に立て替える給与・外注費も増える点に注意が必要です。
売上単価だけでなく、社会保険料、交通費、営業・採用費、待機期間まで含めた1人あたり必要資金を確認します。
- エンジニア別の契約単価
- 給与・外注報酬・社会保険料
- 精算幅と超過・控除
- 稼働報告の提出・承認日
- 請求書の締切と入金日
- 待機人数と待機期間
- 案件別粗利と資金回収日数
SES会社で資金繰りが厳しくなる理由
給与・外注費が入金より先になる
正社員の給与は毎月の支給日に支払い、会社負担の社会保険料等も発生します。協力会社やフリーランスへの報酬も契約期日までに支払います。
取引先への請求は月末の稼働確定後となり、入金はその後です。給与・外注費の支払日と売掛金入金日の間を、自社資金でつなぐ必要があります。
稼働人数の増加で必要資金が膨らむ
10人から20人へ稼働人数が増えれば、将来の売上だけでなく、先に払う給与・外注費も増えます。採用費、入社時の機材、研修費も重なる場合があります。
黒字案件を増やしていても、増員速度が手元資金を上回れば資金不足になります。成長時の運転資金を受注前に計算してください。
稼働報告・請求書の遅れ
タイムシートや稼働報告の承認が遅れると、精算額を確定できず、請求書の締切に間に合わない場合があります。1日の遅れで請求が翌月扱いになる契約もあるため、取引先の締め処理を確認します。
精算幅と控除
稼働時間が精算幅を下回ると控除、上回ると超過精算が発生する契約があります。固定単価だけで売上を見込むと、休暇や稼働不足で請求額が下がる可能性があります。
精算方法は契約ごとに異なります。上下割、固定、時間単価などの計算式を案件台帳へ登録します。
待機人員の給与負担
契約終了から次の案件開始まで待機が発生すると、売上がない期間も正社員の給与や社会保険料を負担します。待機期間が長いほど、稼働中案件の粗利だけでは固定費を賄えなくなります。
稼働率だけでなく、契約終了予定日と次案件の開始見込みを3か月先まで管理します。
エンジニア・案件別に必要運転資金を計算する
1人あたり月間原価を出す
正社員の場合は、給与だけでなく会社負担社会保険料、交通費、福利厚生、機材、採用費配賦を含めます。外注の場合は契約報酬、交通費、紹介料等を確認します。
| 区分 | 主な原価 |
|---|---|
| 正社員 | 給与、賞与引当、社会保険料、交通費、福利厚生 |
| 契約社員 | 給与、社会保険料等、交通費 |
| 協力会社 | 業務委託費、精算超過、交通費 |
| フリーランス | 業務委託報酬、精算超過、経費 |
雇用契約の給与と業務委託契約の報酬は、法的な扱いも支払管理も同じではありません。契約形態に沿って分けます。
入金までの先行月数を確認する
例として、1人あたり毎月の現金原価が50万円、取引先からの入金までに給与2か月分を先に払う構造なら、1人あたり100万円の先行資金が必要です。20人なら2,000万円です。
実際の必要額は、給与支給日、外注支払日、請求締日、入金日、消費税、社会保険料、他の固定費で変わります。
案件別粗利を資金ベースで見る
契約単価80万円、現金原価55万円なら差額は25万円ですが、営業・管理部門の人件費、採用費、待機費も配賦します。
帳簿上の粗利が出ていても、入金前の立替額が大きければ資金繰りは苦しくなります。利益と現金残高を分けて管理してください。
13週間の資金繰り表へ合算する
エンジニア別台帳から、給与日、外注支払日、社会保険料、売掛金入金日を会社全体の表へ集約します。
資金繰り表の作り方を参考に、今後13週間の最低残高を毎週更新します。
契約と請求業務を整える
SESという呼称だけで契約を判断しない
SESは実務上使われる呼称であり、個々の取引は準委任、請負、派遣等の契約内容や実態を確認する必要があります。誰が業務指示を出すか、成果完成義務があるか、勤怠・稼働をどう管理するかを契約書だけでなく実態と合わせて確認します。
契約区分の判断に不安がある場合は、弁護士や社会保険労務士等へ相談してください。
単価・精算幅・支払条件を書面化する
基本単価、基準時間、超過・控除単価、端数処理、休暇、交通費、在宅勤務、稼働報告、請求締日、支払日を注文書・契約書等で確認します。
中小企業庁は情報サービス・ソフトウェア産業向けの取引適正化ガイドラインを公表しています。受託取引に関する法令の適用は当事者の規模や取引内容で異なるため、自社取引が対象か個別に確認します。
単価だけで契約を比較せず、精算方法、請求締切、支払日まで一組で確認します。
稼働報告を締日前に回収する
月末最終日に初めて回収するのではなく、承認者、提出様式、締切、差戻し期限を決めます。エンジニア本人、営業担当、取引先担当者のどこで止まっているかを一覧化します。
請求書の自動チェックを行う
契約単価、精算時間、税区分、宛名、注文番号、担当部署、送付方法をチェックリスト化します。取引先ポータルへの登録が必要な場合は、締切前にアップロードします。
稼働した月と請求できた月がずれないよう、稼働報告から請求書発行までを月次業務として固定します。
入金消込と遅延確認
請求額と入金額を照合し、控除、振込手数料、相殺、未入金を確認します。入金が遅れた場合は、営業担当だけでなく取引先経理へ請求書受領・支払予定を確認してください。
正社員・協力会社・フリーランス別の管理
正社員エンジニア
給与は労働契約と法令に従って支払う必要があり、取引先から未入金だから遅らせてよいものではありません。待機中も雇用契約に基づく対応が必要です。
給与不足が見込まれる場合は、給与の支払い資金が不足する時の対処も確認し、早めに資金を確保します。
協力会社
会社間の契約に従って報酬を支払います。自社の元請から入金されていないことだけを理由に、一方的に支払日を延ばさないでください。
自社取引が中小受託取引適正化法等の対象となるかは、委託内容と当事者の要件で異なります。支払期日や発注内容の明示を専門家へ確認します。
フリーランス
個人へ業務委託する場合は、契約条件と適用法令を確認します。報酬額、業務内容、支払期日、経費、成果・稼働確認を明示し、会社間取引と同じだと決めつけないでください。
多重商流
商流が多層になると、契約確認、稼働報告、請求、入金までの連絡先が増えます。自社の直接契約先、エンド企業、指揮命令・業務管理の実態、情報管理責任を確認します。
資金面だけでなく契約・労務上のリスクもあるため、取引開始時に商流図を作成します。
待機人員と低採算案件を改善する
待機コストを毎週把握する
待機者数だけでなく、待機開始日、月間現金原価、面談数、提案案件、開始見込み日を確認します。待機1人あたりの週次資金流出を把握すると、営業の優先順位を決めやすくなります。
契約終了を早く把握する
更新確認日、終了通知期限、次回更新日を案件台帳へ登録します。契約終了直前に次案件を探し始めると待機が長くなります。
赤字案件を単価だけで判断しない
高単価でも高い紹介料や外注費がかかれば粗利は低くなります。低単価でも長期稼働し、採用・待機コストが少なければ資金が安定する場合があります。
案件別に粗利額、粗利率、入金までの日数、更新確度を並べて評価します。
単価改定を根拠付きで相談する
スキル向上、担当範囲拡大、市場単価、人件費・社会保険料の上昇を示し、更新時に単価を相談します。原価上昇を自社だけで負担し続けないようにします。
SES会社の資金調達方法
入金条件の短縮
外部資金を使う前に、支払サイト短縮、月中請求、初月の前払い、立替経費の早期精算を相談します。取引先の経理ルール上難しい場合もありますが、更新・新規契約時に交渉します。
銀行・日本政策金融公庫
継続的に稼働人数を増やす場合は、運転資金を相談します。契約一覧、エンジニア別採算、入出金サイト、待機状況、採用計画、資金繰り表を用意します。
運転資金が足りない時の対応と銀行以外の資金調達方法も比較してください。
当座貸越・既存融資枠
毎月発生する一時的な資金不足には、必要時だけ利用する融資枠が合う場合があります。金利、極度額、更新条件、担保・保証を確認します。
増資・役員借入
急成長や採用投資で長期間資金が必要なら、短期借入だけでなく資本性資金も検討します。代表者が会社へ貸し付ける場合は、契約・会計処理・返済条件を整えます。
ファクタリングを使える条件
ファクタリングは、確定した売掛債権を期日前に売却する方法です。SES会社では、稼働が確定し請求済みの売掛金がある場合に候補となります。
候補になり得る
- 稼働報告が承認されている
- 請求金額が確定している
- 取引先との契約・注文を確認できる
- 入金日より給与・外注支払日が先
- 手数料後も必要資金と次月資金が残る
追加確認が必要
- 稼働時間が未承認
- 精算幅による金額が未確定
- 請求書をまだ発行できない
- 契約開始前の将来売上
- 商流が多層で債権の帰属を確認できない
ファクタリングを使う前に、どの月のどの取引先への売掛金を売却するかを案件台帳で特定します。
たとえば売掛金500万円を手数料8%で資金化すると、手取りは460万円です。入金日に入る予定だった500万円はなくなるため、当月だけでなく次月の給与まで確認します。
ファクタリングの仕組みと手数料の考え方を確認し、複数見積もりを比較してください。
金融庁は、売主へ買戻しや自己資金での弁済を求めるなど、実態が貸付に近い偽装ファクタリングへ注意喚起しています。契約名だけで判断しません。
SES会社が避けるべき対応
給与を取引先入金まで遅らせる
給与支払いと取引先からの売掛金回収は別です。資金不足が見込まれる時点で銀行等へ相談し、従業員へ無断で遅らせないでください。
協力会社への支払いを一方的に延ばす
元請から未入金でも、自社と協力会社の契約上の支払義務は別に確認します。延長が必要なら、事前に理由、金額、日付を相談し、合意を記録します。
未確定稼働を売掛金として扱う
見込み稼働、未承認タイムシート、将来の契約更新は確定売掛金ではありません。資金繰り表でも確定と見込みを分けます。
架空請求・二重譲渡
稼働していない人員を請求する、時間を水増しする、同じ売掛金を複数社へ譲渡して資金を受け取る行為は行ってはいけません。
売上拡大だけを追う
低粗利案件や長い支払サイトの案件を急増させると、売上は伸びても資金不足が拡大します。採用・受注判断に必要運転資金を含めます。
13週間で進める資金繰り改善
1週目
全エンジニアについて契約単価、現金原価、精算幅、給与・外注支払日、請求・入金日、契約終了日を一覧化します。
2〜4週目
未承認の稼働報告、請求漏れ、入金遅延を解消します。請求締切の3営業日前を社内締切に設定します。
5〜8週目
待機者と低採算案件の対応を決め、契約更新時に単価・支払条件を交渉します。資金不足が続く場合は銀行・公庫へ運転資金を相談します。
9〜13週目
採用1人あたり必要資金と同時採用可能人数を決めます。新規受注時に粗利だけでなく入金サイトと先行資金を審査します。
採用数ではなく、稼働開始から初回入金まで支えられる人数を基準に成長計画を作ります。
SES会社の相談先
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 資金繰り・融資 | 取引銀行、日本政策金融公庫、税理士 |
| 契約区分・取引条件 | 弁護士 |
| 雇用・給与・派遣 | 社会保険労務士、労働局 |
| 取引適正化 | 下請かけこみ寺、中小企業庁 |
| 経営改善 | よろず支援拠点、商工会議所・商工会 |
よくある質問
Q: SES会社はなぜ売上が増えても資金不足になりますか? A: エンジニア給与や外注費を先に支払い、稼働確定・請求後に取引先から入金されるためです。増員時は売上と同時に先行資金も増えます。
Q: SESの入金サイトは何日が一般的ですか? A: 契約先や締日によって異なり、一律の日数では示せません。注文書・契約書で締日、請求書提出期限、支払日を確認してください。
Q: SESは準委任契約ですか? A: SESは実務上の呼称で、個別取引の契約内容と実態を確認する必要があります。準委任、請負、派遣等を名称だけで判断しないでください。
Q: 稼働報告が未承認でもファクタリングできますか? A: 請求金額が確定していない場合は、請求書型ファクタリングの対象確認が難しくなります。承認状況、契約、請求条件を事業者へ確認してください。
Q: SES売掛金のファクタリングで必要な書類は何ですか? A: 一般に契約書・注文書、請求書、稼働実績、通帳等を確認されますが、必要書類は事業者と取引によって異なります。
Q: 待機中の給与を減らせますか? A: 雇用契約、就業規則、労働法令、休業の原因等によって判断が異なります。自己判断で減額せず、社会保険労務士や弁護士へ相談してください。
まとめ
SES会社の資金繰りは、稼働人数、1人あたり現金原価、給与・外注支払日、売掛金入金日で決まります。
- エンジニア・案件別に単価と原価を把握
- 稼働報告から請求までの遅れを防止
- 待機と契約終了予定を3か月先まで管理
- 採用前に初回入金までの必要資金を計算
- 継続運転資金は銀行・公庫へ相談
- 確定売掛金の一時的な時間差はファクタリングを比較
給与と外注報酬、準委任と派遣、確定売掛金と将来稼働を混同しないことが重要です。13週間の資金繰り表を毎週更新し、増員できる人数を手元資金から逆算してください。
