本ページにはプロモーションが含まれています。在庫の適正量、評価、値下げ、廃棄、会計・税務処理は、商品特性や業種、契約条件で異なります。重要な判断は、現物・販売実績・契約を確認し、必要に応じて税理士等の専門家へ相談してください。
在庫が増えると、貸借対照表上は資産が増えていても、仕入代金として出た現金は販売・回収まで戻りません。資金繰りを改善するには、在庫総額だけでなく、SKUごとの保有日数、最終出荷日、在庫回転期間を確認し、売れない在庫への発注を止める必要があります。
最初に実地棚卸しで帳簿と現物を合わせ、在庫を「通常」「過剰」「滞留」「販売困難」に分けます。そのうえで、値下げ、セット販売、返品交渉、他チャネル販売、処分を比べ、現金回収額と今後の保管費を見て対応を決めます。
この記事では、在庫が資金繰りを悪化させる仕組み、棚卸資産回転期間の計算、過剰在庫の見つけ方、在庫圧縮と発注ルール、支払いが迫った時の対策を解説します。
在庫は売れて代金を回収するまで、給与や家賃の支払いに使えない資金です。
在庫総額だけを見ると、売れ筋と滞留品が混ざります。商品ごとに「最後に売れた日」と「何日分あるか」を出すと、先に止める発注が見えます。
- 実地棚卸しで現物と帳簿を合わせる
- SKU別に数量・原価・保有日数を出す
- 最終販売日と今後の需要を確認する
- 発注残と買掛金の支払日を確認する
- 回転期間を過去と比較する
- 処分方法ごとの現金回収額を比べる
- 13週間の資金繰りへ反映する
在庫が増えると資金繰りが悪化する理由
在庫は、商品、製品、原材料、仕掛品等として貸借対照表に計上される資産です。しかし、銀行預金のように、そのまま振込へ使える資産ではありません。
商品を仕入れると、現金払いならすぐに資金が出ます。掛け仕入れでも支払期日が来れば現金が減ります。在庫が売れなければ売掛金や現金は生まれず、仕入れに投じた資金が倉庫で止まります。
J-Net21の資金繰り改善の解説では、運転資金を「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で示し、在庫が寝ている期間が長いほど資金繰りが悪化すると説明しています。
利益が出ていても現金が足りなくなる
損益計算では、期末在庫は売上原価の計算に関係します。一方、資金繰りでは、仕入代金をいつ支払い、販売代金をいつ回収するかが重要です。
たとえば、300万円の商品を仕入れ、翌月に仕入先へ支払い、販売は3か月後、得意先からの入金は販売の翌月という条件なら、支払いから回収まで数か月の空白が生じます。帳簿上に在庫があっても、その間の給与や家賃には使えません。
在庫の増加額だけでなく、仕入支払日から販売代金の回収日までを確認してください。
売上が伸びる時も在庫資金が必要になる
売上増を見込んで仕入れを増やすと、販売前に資金が出ます。売れ筋を欠品させないための在庫は必要ですが、販売量より速いペースで在庫が増えると、成長中でも現金不足になります。
売上計画、発注量、仕入支払日、販売予定、回収条件を一つの表で確認し、在庫増に必要な運転資金を見積もります。
保管・品質・処分にも費用がかかる
過剰在庫には、倉庫料、保険、棚卸し作業、移動、温度管理、品質劣化、破損、廃棄等の費用が発生します。
J-Net21の過剰在庫に関する解説も、在庫維持費用の増加、収益の減少、キャッシュフローの悪化を挙げています。
在庫原価だけでなく、保管を続けることで増える費用と売価低下も含めて判断します。
資金繰りを圧迫する在庫の見つけ方
資金繰りを改善するには、在庫全体を一括で減らすのではなく、現金化が遅い商品を特定します。
実地棚卸しで現物と帳簿を合わせる
帳簿上は100個でも、破損、紛失、誤出荷、入力漏れで現物が一致しないことがあります。まず保管場所を決め、品番を付け、入出庫記録と現物を合わせます。
J-Net21の在庫管理Q&Aでは、在庫場所を明確にし、継続的に入出荷を記録する仕組みを在庫管理の基本としています。
帳簿在庫が正しくなければ、回転期間や発注点を計算しても判断を誤ります。
SKU別に在庫年齢を出す
商品ごとに次の項目を一覧にします。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| SKU・品番 | 同一商品を識別できる番号 |
| 現在数量 | 実地棚卸し後の数量 |
| 在庫原価 | 数量と単価から把握 |
| 最終入庫日 | 最後に仕入れた日 |
| 最終出庫日 | 最後に売れた・使った日 |
| 保有日数 | 入庫または基準日からの経過 |
| 発注残 | 未入荷の注文数量 |
| 販売見込 | 受注、予約、過去実績等の根拠 |
| 状態 | 通常・過剰・滞留・破損等 |
「90日売れていないから一律処分」と決める必要はありません。季節商品、保守部品、災害備蓄、長納期材料では必要な保有期間が異なります。自社の販売周期と調達リードタイムを基準にします。
ABC分析で売上構成と在庫構成を比べる
売上高や粗利への貢献が大きい商品をA、次をB、小さい商品をCと分けます。そのうえで、在庫金額の構成も同じように分けます。
J-Net21の小売業向け在庫費用削減策は、売上高のランクより在庫高のランクが高い商品を過剰在庫候補とする考え方を紹介しています。
売上はCなのに在庫金額はAという商品は、資金を多く固定している可能性があります。ただし、新商品、戦略在庫、最低発注量による一時増加は、理由を記録して別扱いにします。
数量が少なくても単価が高い在庫は資金を大きく固定するため、数量と金額の両方で見ます。
棚卸資産回転期間の計算方法
棚卸資産回転期間は、在庫を仕入れてから販売するまでに、平均して何日程度保有しているかを見る指標です。
売上原価基準の計算式
中小企業庁の「中小会計要領」の手引きでは、次の式を示しています。
棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷売上原価×365
棚卸資産1,200万円、年間売上原価7,300万円なら、計算例は次のとおりです。
1,200万円 ÷ 7,300万円 × 365日 = 約60日
約60日分の在庫を保有している計算です。月数で見る場合は、棚卸資産を月平均の売上原価で割ります。
平均在庫を使う
期末だけ在庫が増減する事業では、期末残高だけで判断すると実態からずれることがあります。期首と期末の平均、または月末在庫の平均を使うと、期間中の実態に近づきます。
平均棚卸資産 =(期首棚卸資産+期末棚卸資産)÷2
ただし、月ごとの変動が大きい場合は、12か月の月末残高平均等を使います。どの平均を使ったかを記録してください。
売上高基準と売上原価基準を混ぜない
資料によっては、棚卸資産を売上高で割る式もあります。売上高には粗利が含まれるため、売上原価基準とは数値が変わります。
前年、自社目標、同業データを比較する時は、分子・分母・日数の計算基準をそろえます。
全社平均だけでなく商品別に見る
全社の回転期間が短くても、一部の高額商品だけが長期滞留している場合があります。SKU別に次を出します。
- 現在在庫で何日販売できるか
- 最終出庫から何日経過したか
- 過去30日・90日・365日の販売数量
- 発注残を含めると何日分になるか
- 在庫原価に占める割合
回転期間は短いほど必ず良いのではなく、欠品・長納期・仕入価格とのバランスで判断します。
過剰在庫・滞留在庫が増える原因
需要予測を上振れ前提で作る
目標売上をそのまま需要予測にすると、販売実績より多く仕入れます。販促の実施可否、季節、天候、競合、新商品の反応等で需要は変わります。
基本・上振れ・下振れの3シナリオを作り、初回発注は基本または下振れに耐えられる数量から検討します。
最小発注量と値引きに引かれる
ロットを増やすと単価が下がっても、売れ残れば資金が寝ます。単価差だけでなく、追加在庫額、保管費、廃棄可能性、資金調達費用まで比べます。
部門ごとに発注して在庫が見えない
店舗、営業所、倉庫、EC、卸部門が別々に発注すると、全社では十分あるのに追加購入することがあります。保管場所別の数量を一つの台帳へ集約し、移動で対応できるか確認します。
返品・不良・旧型を通常在庫に混ぜる
返品、破損、検品待ち、旧型、期限間近を通常在庫と同じ数量に含めると、販売可能数を誤ります。状態コードを付け、販売可能在庫と隔離在庫を分けます。
発注停止の基準がない
売れ行きが落ちても、前年と同じ数量を自動発注すると在庫が積み上がります。最終出庫日、在庫日数、販売速度を基準に発注を止めるルールを作ります。
日本政策金融公庫の経営Q&Aも、買掛金とともに在庫が増え続ける場合、不良在庫・滞留在庫を多く抱えている可能性を指摘しています。
在庫処分より先に追加発注を止め、入荷予定まで含めて在庫量を確認してください。
在庫を減らして資金繰りを改善する手順
1. 発注残を止める・減らす
在庫処分を始めても、同じ商品が入荷し続ければ減りません。発注済み商品について、数量変更、納期変更、キャンセルが契約上可能か仕入先へ確認します。
一方的なキャンセルや支払遅延は避け、合意内容を文書で残してください。
2. 在庫を4区分する
| 区分 | 判断例 | 対応 |
|---|---|---|
| 通常 | 販売速度と在庫量が合う | 発注ルール維持 |
| 過剰 | 売れるが必要量より多い | 発注停止・販促 |
| 滞留 | 長期間動いていない | 値下げ・別販路 |
| 販売困難 | 破損・期限切れ・規格外 | 廃棄等を検討 |
区分の日数は自社で決めます。食品、アパレル、機械部品、建材では、劣化と販売周期が異なります。
3. 現金回収額を比較する
値下げ率だけでなく、次の式で資金回収を比較します。
現金回収見込 = 売価 × 販売見込数量 - 販売手数料 - 送料 - 追加作業費
保管継続案では、将来売価から倉庫料、保険、品質低下、廃棄費用を差し引きます。帳簿上の原価を回収できない場合でも、保管を続けるより資金面で良いことがあります。
4. 資金繰り表へ反映する
処分予定を売上目標として一括計上せず、販売確度と入金日を確認します。現金販売、カード決済、掛売りでは入金時期が異なります。
在庫処分による入金、仕入減少、保管費減少を運転資金が足りない時の対策で使う資金繰り表にも反映します。
在庫の帳簿価格ではなく、実際にいつ、いくら現金へ戻るかを資金繰りへ入れます。
過剰在庫を現金へ戻す方法
通常販路で売り切る
既存顧客への案内、店舗間移動、EC在庫の補充、営業担当への販売対象共有等で、値下げせず売れる可能性を先に確認します。
値下げ・セット販売・特典へ使う
単品値下げ、関連商品のセット、購入特典、業務用まとめ売り等を検討します。ただし、通常商品の価格を崩す影響や、表示・品質に関する法令も確認します。
他の販路・業者へ売却する
アウトレット、卸売市場、買取業者、オークション等が候補です。手数料、送料、検品、入金日、返品条件を確認します。
仕入先へ返品・交換を相談する
契約や関係性によっては、返品、他商品との交換、次回仕入との相殺を相談できる場合があります。返品権がない商品を一方的に送り返さないでください。
廃棄する
販売不能で保管費が続くなら、廃棄を検討します。廃棄証明、写真、数量、理由、処分費を記録し、会計・税務処理は税理士へ確認してください。
損失を先送りするためだけに保管を続けず、回収可能額と今後の費用で判断します。
過剰在庫を再発させない発注ルール
発注点を設定する
発注点は、在庫が一定数量まで減った時に発注する基準です。販売速度、調達リードタイム、安全在庫を使って設定します。
発注点 = リードタイム中の予想使用量 + 安全在庫
需要変動や納期遅れがあるため、計算結果は定期的に見直します。
安全在庫を理由なく増やさない
安全在庫は欠品に備える在庫です。「不安だから多め」ではなく、販売変動、納期変動、欠品時の影響を根拠に決めます。
発注承認に在庫金額を入れる
数量だけでなく、現在在庫原価、発注残、発注後在庫金額、支払日、予想販売日を承認画面へ表示します。
販売と購買を同じ会議で確認する
営業は販売機会、購買は欠品、経理は資金を重視します。部門別に判断せず、販売予測、在庫、発注、支払を同じ表で確認します。
毎月の指標を固定する
次の指標を毎月同じ基準で記録します。
- 棚卸資産総額
- 棚卸資産回転期間
- 90日・180日・365日超の在庫金額
- 欠品件数
- 廃棄・値下げ金額
- 発注残高
- 在庫差異
過剰在庫だけを減らし、売れ筋や長納期品まで一律に削減しないことが重要です。
在庫が原因で支払いが迫っている時の対応
直近13週間の不足額を出す
口座残高、売掛金の入金、買掛金、給与、家賃、税金、返済等を週ごとに並べます。いつ、いくら不足するかを確認してください。
資金不足が危機的な場合は会社が潰れそうな時の初動も確認し、支払期限前に関係先へ連絡します。
仕入先へ支払条件を相談する
支払日の変更や分割は、仕入先の合意が必要です。不足額、支払可能日、今後の発注、在庫圧縮策を説明します。
無断で支払いを遅らせると、取引停止や信用悪化につながるため避けてください。
販売済みの売掛金を確認する
すでに商品を販売し、請求内容と入金日が確定している売掛金がある場合、入金前倒しの方法としてファクタリングを検討できることがあります。
ただし、ファクタリングは未販売の在庫を買い取る仕組みではありません。ファクタリングの仕組みを確認し、対象債権、手数料、手取り額を比較します。
ファクタリング手数料の計算方法も使い、資金化額から手数料を引いた手取りで支払いを賄えるか確認してください。
慢性的な不足なら構造を直す
在庫を処分しても毎月現金が足りない場合は、粗利不足、固定費、回収・支払条件、借入返済等も確認します。
在庫圧縮は一度きりの現金回収に終わる場合があります。発注量と利益率を直さなければ、再び資金が在庫に変わります。
よくある質問
Q: 在庫は資産なのに、なぜ資金繰りが悪化しますか?
A: 在庫は会計上の資産ですが、販売して代金を回収するまで支払いには使えません。仕入代金の支払いが販売・回収より先になると、その期間の現金が不足しやすくなります。
Q: 棚卸資産回転期間はどのように計算しますか?
A: 売上原価基準では、棚卸資産÷年間売上原価×365日で計算します。平均在庫を使う方法もあります。比較する時は売上高基準と売上原価基準を混ぜないでください。
Q: 在庫回転期間は短いほど良いですか?
A: 一律には言えません。短すぎると欠品や生産停止のリスクがあります。販売速度、調達リードタイム、安全在庫、欠品時の影響を合わせて判断します。
Q: 売れない在庫は原価割れでも処分すべきですか?
A: 回収見込額、保管費、売価下落、廃棄費、他販路での販売可能性を比べて判断します。会計・税務処理は税理士へ確認してください。
Q: 在庫をファクタリングで現金化できますか?
A: 通常の請求書ファクタリングは、販売後に発生した確定売掛金を対象にします。未販売在庫そのものの買取とは異なります。在庫買取や在庫担保融資等は別の契約です。
Q: 過剰在庫を減らす時、最初に何をしますか?
A: 実地棚卸しで現物と帳簿を合わせ、SKU別に数量、原価、最終出庫日、保有日数、発注残を一覧にします。その後、売れない商品の追加発注を止めます。
まとめ
在庫が資金繰りを悪化させるのは、仕入代金を支払ってから、商品を販売し代金を回収するまで資金が固定されるためです。保管費、劣化、値下げ、廃棄も現金を減らします。
実地棚卸しで現物と帳簿を合わせ、SKU別の原価、保有日数、最終出庫日、発注残を確認します。棚卸資産回転期間は同じ計算基準で継続比較し、全社平均だけでなく高額な滞留品を特定してください。
過剰在庫は、発注停止、値下げ、セット販売、他販路、返品交渉、処分を比べ、実際の現金回収額で判断します。支払いが迫っている場合は、13週間の不足額を出し、仕入先との合意、販売済み売掛金の回収前倒し、資金調達を検討します。
在庫削減の目的は倉庫を空けることではなく、必要な在庫を残しながら、止まっている資金を事業へ戻すことです。
