本記事は広告・PRを含みます。売掛金の請求可否、消滅時効、保全・裁判・強制執行、貸倒れの判断は、契約、証拠、相手方の状態、請求額によって異なります。具体的な回収は弁護士、会計・税務処理は税理士・公認会計士等へ確認してください。
売掛金を払ってくれないときは、最初に契約上の支払期日、請求額、請求書の到達、納品・検収、入金消込を確認します。 単純な事務ミスなら早期に解決できますが、資金難、契約上の争い、連絡不能の兆候がある場合は、証拠を整理して対応を早める必要があります。
いきなり強い文面を送るのではなく、確認連絡、期限を示した督促、書面催告、専門家相談、法的手続の順に進めます。
重要なのは、感情的に催促することではなく、「何の代金を、いくら、いつまでに支払う約束だったか」を証拠と日付で確定することです。
- 契約書・注文書・支払条件
- 納品・役務提供・検収の完了
- 請求書の宛先・到達・必着日
- 請求額、消費税、値引き、返品、相殺
- 銀行明細と入金消込
- 相手の回答と約束入金日
- 消滅時効や法的手続の期限
売掛金を払ってくれないとき最初に確認すること
契約上の支払期日は過ぎているか
請求書に書いた日付だけでなく、基本契約、注文書、発注条件、検収条件を確認します。月末締め翌月末払いなら、納品日や請求書発行日ではなく、合意した支払日が基準です。
支払日が休日の場合、前営業日か翌営業日かは契約によって異なります。「いつも翌営業日だから」と推測せず、休日条項を確認してください。
請求内容と証拠は一致しているか
次の資料を請求書番号ごとにそろえます。
- 見積書、契約書、注文書
- 納品書、作業報告書、検収書
- 請求書と送信履歴
- メール、チャット、議事録
- 銀行明細、売掛金元帳、入金消込記録
- 値引き、返品、相殺、一部入金の合意
帳簿に売掛金が残っていても、返品や値引きが確定しているなら、帳簿残高がそのまま請求可能額とは限りません。
入金済み・名義違いではないか
取引先名と振込名義が違う、複数請求を合算して入金した、振込手数料を差し引いたなどの理由で未消込になることがあります。誤督促を避けるため、銀行明細を確認します。
相手の担当者だけで止まっていないか
担当者へ連絡しても、経理部門へ請求書が届いていない場合があります。担当者、経理窓口、承認者、代表連絡先を分けて確認します。ただし、第三者へ債務情報を不用意に伝えないよう注意してください。
売掛金未払いへの段階別対応
以下の日数は法定期限ではなく、社内運用の一例です。金額、取引関係、信用不安、時効期限に応じて前倒しします。
| 時期の例 | 対応 | 確認すること |
|---|---|---|
| 期日翌日~3日 | 入金・消込・請求到達の確認 | 単純ミスか |
| 4~7日 | 電話・メールで支払予定日を確認 | 日付と担当者 |
| 8~14日 | 期限を示した督促書面 | 回答期限・争点 |
| 15~30日 | 内容証明、専門家相談を検討 | 証拠・時効・資産 |
| 長期化・信用不安 | 支払督促、調停、訴訟、保全等を検討 | 費用対効果・回収可能性 |
1. 確認連絡をする
最初の連絡では、未入金と決めつけず「当社で入金を確認できていません」と伝えます。請求書番号、請求金額、支払期日、振込先を示し、入金済みなら振込日と名義を確認します。
2. 支払予定日を日付で回答してもらう
「近日中」「経理へ確認中」では資金繰りを更新できません。「8月20日までに回答」「8月25日に振込」のように日付で記録します。
分割払いを提案された場合は、総額、各回の金額・期日、遅れた場合の扱い、振込先を文書にします。合意書の内容と債務承認・時効への影響は弁護士へ確認してください。
3. 期限付きの督促書を送る
電話だけで進展しない場合、請求根拠と回答期限を書面やメールで通知します。威圧的な表現ではなく、事実、希望する対応、連絡先を簡潔に示します。
4. 信用不安があれば新規取引を見直す
未払いがあるのに新規受注を続けると、滞留額が増えます。前払い、一部前金、取引上限の引下げ、出荷停止等を契約と取引関係に照らして検討します。独断で契約違反となる対応をしないよう、必要に応じて専門家へ相談します。
督促メール・電話の例
最初の確認メール例
件名:請求書No.1234のご入金確認について
株式会社〇〇 経理ご担当者様
平素よりお世話になっております。 請求書No.1234(金額330,000円、支払期日2026年8月31日)につきまして、当社でご入金を確認できておりません。
すでにお手続き済みの場合は、振込日と振込名義をご教示ください。未処理の場合は、支払予定日を2026年9月3日までにご回答いただけますでしょうか。
行き違いでしたらご容赦ください。請求書を再添付いたしますので、ご確認をお願いいたします。
実際の文面では、自社名、担当者、請求番号、金額、期日、回答期限、振込先を正確に記載します。
電話で確認する項目
- 相手の会社名・部署・氏名
- 請求書番号・金額・支払期日
- 請求書を受領しているか
- 支払処理の現在位置
- 振込予定日
- 支払えない理由や争点
- 次回回答期限
通話後は、日時と内容を社内記録へ残し、合意事項をメールで確認します。無断録音の適法性や利用方法は個別事情があるため、専門家へ確認してください。
内容証明郵便を送るときの注意点
内容証明が証明する範囲
日本郵便の内容証明は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを証明する制度です。請求内容が真実であることや、債権が法的に成立していることを証明する制度ではありません。
また、内容証明だけでは相手が受け取った事実まで証明できません。受領の証拠が必要なら、別途「配達証明」を付ける方法があります。
内容証明へ記載する項目
- 債権者・債務者の名称と住所
- 契約・取引の特定
- 請求書番号、元本、支払期日
- 未払いであること
- 支払期限と振込先
- 期限までに支払い・回答がない場合の対応
- 作成日、差出人
遅延損害金を請求する場合は、契約条項、適用利率、起算日、計算方法を確認します。「売掛金の遅延損害金」も参照してください。
内容証明は強制執行を直接できる書類ではありません。送付後の回答期限と、次に取る手続を決めてから使います。
売掛金を回収する法的手続
どの手続が適切かは、請求額、証拠、争いの有無、相手の住所・資産、費用、期限で変わります。
| 手続 | 特徴 | 向いている場面の例 |
|---|---|---|
| 民事調停 | 話合いによる合意を目指す | 分割払い等を協議したい |
| 支払督促 | 書面審査を中心に債務名義取得を目指す | 金銭請求で争いが小さい |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭請求、原則1回審理 | 証拠が整理された少額請求 |
| 通常訴訟 | 主張・証拠を審理し判決等を目指す | 高額・複雑・争いがある |
支払督促
裁判所は、支払督促を金銭その他の代替物等の給付請求について、簡易迅速に債務名義を得ることを目的とする手続と説明しています。原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官へ申し立てます。
相手が異議を申し立てると、請求額に応じて訴訟手続へ移行します。相手の住所が不明、送達できない、請求に争いがある場合などは向かないことがあります。
少額訴訟
少額訴訟は、60万円以下の金銭支払いを求める訴えについて、原則1回の審理で解決を図る手続です。最初の期日までに言い分と証拠を準備する必要があります。
相手が少額訴訟に異議を述べれば通常手続へ移る場合があり、勝訴しても分割払い・支払猶予等の判決がされることがあります。
民事調停
民事調停は、勝敗を決めるだけでなく、話合いで合意を目指す手続です。相手が一括払いはできないが分割なら可能という場合などに検討できます。ただし、合意できる見込みや相手の出席・資力も考えます。
通常訴訟と強制執行
請求に争いがある、高額である、証人や複雑な証拠が必要な場合は通常訴訟を検討します。判決、和解調書、仮執行宣言付支払督促などの債務名義を得ても、自動的に入金されるとは限りません。
支払われない場合、要件を満たせば預金等への強制執行を検討します。詳しくは「売掛金未回収と差押え」で整理しています。
売掛金未払いと消滅時効
現行民法166条では、債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使できる時から10年間行使しないときに時効で消滅する可能性があります。2020年4月より前の債権は旧法や経過措置が関係する場合があります。
電話や請求書の再送だけで、時効が永久に延びるわけではありません。民法150条の催告による完成猶予は6か月で、猶予中の再度の催告には同じ効力がないと定められています。
支払督促や裁判上の請求は、民法147条の完成猶予・更新に関係しますが、申立てと手続終了の状況で結論が変わります。
時効の詳しい確認は「売掛金の時効は何年?」を参照し、期限が近い場合は早急に弁護士へ相談してください。
相手が倒産・破産しそうな場合
連絡不能、事業所閉鎖、複数の差押え、支払停止等の兆候がある場合、通常の督促を長く繰り返すだけでは回収機会を失う可能性があります。
- 法人の登記・営業状態を適法な方法で確認する
- 契約・請求・納品・入金資料を保全する
- 担保、保証、債権譲渡等の有無を確認する
- 破産・再生等の通知を見落とさない
- 債権届出や保全の期限を専門家へ確認する
他の債権者より先に回収しようとして、違法・不当な方法を使ってはいけません。偏頗弁済等の問題もあり得るため、信用不安を把握したら早めに専門家へ相談します。
売掛金未払いでやってはいけないこと
威圧・脅迫・過度な連絡
大声、脅迫的表現、深夜早朝の反復連絡、相手の業務を妨害する行為は避けます。正当な債権があっても、回収方法が何でも許されるわけではありません。
SNSや取引先への公開
相手の未払いをSNSへ投稿したり、無関係な取引先・家族へ言いふらしたりすると、名誉・信用・個人情報等の問題になる可能性があります。回収に必要な範囲で、適切な相手へ連絡します。
二重請求・過大請求
一部入金、返品、値引き、相殺を反映せず請求すると、争いが拡大します。元本、遅延損害金、費用を分け、根拠を示します。
架空の法的措置を告知する
実際には申し立てていないのに「差押え済み」「裁判所から命令が出る」などと伝えてはいけません。今後検討する手続は、事実に沿った表現にします。
未払いが資金繰りへ与える影響
未払い額を予定どおり入金される前提で「資金繰り表」へ残すと、支払資金を過大に見積もります。確定、見込み、未確定、回収懸念に分け、入金予定を保守的に更新します。
未払い債権をファクタリングで解決できるとは限らない
一般的なファクタリングは、支払期日前の正常な売掛債権を対象に審査します。すでに期限超過し、相手が支払いを拒否している債権や、契約内容に争いがある債権は通常の対象になりにくいと考えてください。
別の正常債権を期日前に資金化する場合は、未払い債権の回収とは分けて検討します。候補比較は「ファクタリング会社ランキング」を確認できますが、手数料と入金期限を比較してください。
売掛金未払いの会計・税務処理
支払期日を過ぎただけで、売掛金を帳簿から消去したり貸倒損失へ振り替えたりしないでください。
- 未回収残高と請求根拠を照合する
- 一部入金・値引き・返品・相殺を反映する
- 督促・交渉・法的手続の記録を保存する
- 回収可能性を決算時に評価する
- 貸倒引当金・貸倒損失の会計税務要件を確認する
長期化した債権の管理は「売掛金滞留とは」で解説しています。
売掛金を払ってくれない場合のよくある質問
Q: 支払期日の翌日にすぐ督促してもよいですか?
A: まず入金・消込、休日、請求書到達、検収を確認したうえで、未入金の確認連絡を行います。相手の事情と契約に応じて対応してください。
Q: 督促メールには何を書けばよいですか?
A: 請求書番号、金額、支払期日、未入金であること、回答期限、振込先、連絡先を記載します。行き違いの可能性にも配慮します。
Q: 内容証明を送れば必ず回収できますか?
A: 必ず回収できるわけではありません。内容証明は差し出した文書の内容等を証明する制度で、債権の成立や内容の真実を証明するものではありません。
Q: 内容証明だけで相手が受け取ったことを証明できますか?
A: 内容証明だけでは受領の証明になりません。受領事実も残したい場合は、配達証明を付ける方法があります。
Q: 少額訴訟はいくらまで使えますか?
A: 60万円以下の金銭の支払いを求める訴えが対象です。証拠や相手の異議、回収可能性も考えて選びます。
Q: 請求書を再送すれば時効は止まりますか?
A: 再送だけで永久に止まるわけではありません。催告、支払督促、訴訟、債務承認等の法的効果と期限を専門家へ確認してください。
Q: 未払いの売掛金をファクタリングできますか?
A: 支払期日超過や争いのある債権は、一般的なファクタリングの対象になりにくいと考えられます。別の正常債権の資金化とは分けて検討してください。
まとめ
売掛金を払ってくれないときは、契約上の支払期日、請求内容、納品・検収、請求書の到達、銀行明細を最初に確認します。
単純な処理漏れなら確認連絡で解決できます。回答がない、支払約束が守られない、資金難や争いがある場合は、期限付きの書面、内容証明、専門家相談、支払督促・調停・訴訟等を段階的に検討してください。
督促の目的は相手を威圧することではなく、正しい請求額と期限を確定し、証拠を残しながら回収可能性を高めることです。
