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年内に商品を引き渡した・サービス提供を完了した売上の代金が翌年入金になる場合、原則として年内に「売掛金/売上高」を計上し、翌年の入金時に「普通預金/売掛金」で消し込みます。入金が翌年だから翌年売上にするわけではありません。
ただし、売上計上日は請求書発行日だけでは決まりません。出荷・納品・検収、役務提供の完了、一定期間にわたり充足する契約、現金主義特例の適用などで判断が変わるため、契約と継続適用している会計方針を確認します。
- 年内売上・翌年入金の基本仕訳
- 翌年に請求書を発行する売上の扱い
- 前受金・一部前受けが年度をまたぐ場合
- サービス・長期契約が期をまたぐ場合
- 売上の二重計上・計上漏れを防ぐ決算確認
本記事の仕訳は税抜・消費税を省略した一般例です。収益認識基準、長期工事、委託販売、割賦販売、返品権、変動対価、消費税、現金主義特例などは個別事情で処理が変わります。決算・申告前に税理士、公認会計士等へ確認してください。
年度をまたぐ売掛金の基本仕訳
売掛取引では、売上を計上する時点と代金を回収する時点が分かれます。決算日・年末を挟んでも、二つの仕訳の役割は変わりません。
年内に売上、翌年に入金される例
12月20日に商品10万円を引き渡し、翌年1月31日に銀行振込で回収した単純例です。
年内の売上時:
| 日付 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 12月20日 | 売掛金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
翌年の入金時:
| 日付 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 1月31日 | 普通預金 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
年末時点では、貸借対照表に売掛金10万円、損益計算書に売上高10万円が残ります。翌年は売上高を再度計上せず、売掛金を減らします。
決算日をまたいでも売掛金残高を繰り越す
会計ソフトでは、確定した期末売掛金が翌期の開始残高へ引き継がれます。通常、翌期初日に同じ売上仕訳をもう一度入力する必要はありません。
手作業で繰越処理する場合も、前期末の取引先別残高と翌期首残高を一致させます。繰越額は新しい売上ではなく、すでに計上した債権の残高です。
翌年の入金時は売掛金を消し込む
入金時は、振込名義、金額、請求番号を確認して該当する売掛金へ充当します。売掛金の消込では、複数請求・手数料差引き・差額がある場合の確認方法を解説しています。
翌年入金を「普通預金/売上高」で処理すると、前年と翌年に売上を二重計上するため注意してください。
売上を何年度に計上するかの判断
請求書の日付や入金日だけでなく、商品・サービスの提供事実と会計・税務上の基準を確認します。
商品販売は合理的な引渡し基準を継続適用する
国税庁の所得税基本通達36-8・36-8の2では、棚卸資産の販売による収入時期について引渡しの日を基本とし、出荷日、船積日、着荷日、検収日、使用収益可能日など、資産の性質・契約内容に応じて合理的な日のうち、継続して収入計上する日によると示しています。
たとえば12月28日に出荷、1月4日に相手先へ到着する取引は、自社が継続適用する基準と契約条件によって帰属年度を判断します。「12月に発送したから必ず12月売上」「1月に届いたから必ず1月売上」と一律には決められません。
一時点で完了するサービスは提供完了日を確認する
法人税基本通達では、履行義務が一時点で充足される役務提供は、物の引渡しを要する場合は目的物を完成して引き渡した日、引渡しを要しない場合は約した役務を全部完了した日が収益の帰属時期となる考え方が示されています。
12月中に契約上のサービスが完了し、請求・入金が1月でも、原則的な処理では12月の売上・売掛金を検討します。
一定期間にわたり提供するサービスは期間配分を検討する
保守、サブスクリプション、長期制作など、履行義務が一定期間にわたり充足される契約では、進捗度や期間に応じた収益計上が必要な場合があります。
12月から翌年2月までの3か月契約だからといって、入金日または完了日に全額計上できるとは限りません。契約上の履行義務、解約条件、成果物、検収、進捗度を専門家と確認します。
請求書発行日・入金日は売上計上日と一致しない場合がある
請求書を月末締め・翌月発行とする会社では、12月に提供済みの売上を1月に請求する場合があります。請求書発行が翌年でも、売上が前年へ帰属するなら決算整理で売掛金・売上高を計上します。
反対に、12月に請求書を先行発行しても、サービス提供が翌年なら前受金等となる場合があります。
- 契約書の引渡し・検収・役務完了条件
- 出荷記録、納品書、検収書
- 作業報告、利用期間、進捗資料
- 請求締め日と請求書発行日
- 継続適用している会計方針
小谷良太請求書の日付だけを見ると年度を誤りやすくなります。契約、納品・検収、作業完了の3点を先に並べてください。
パターン別・年度をまたぐ仕訳
以下は基本的な仕訳の考え方です。消費税区分、契約負債・契約資産等の表示は会計基準と会社の科目設定に従います。
年内売上・翌年入金
12月に10万円の売上が成立し、1月に入金される例です。
12月:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
1月:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
最も基本的な年度またぎです。決算書では売掛金が資産に、売上高が当期収益に含まれます。
年内売上・請求書は翌年発行
12月25日にサービスが完了し、1月5日に請求書を発行する例です。12月売上と判断した場合は、請求書発行前でも決算整理で次の仕訳を検討します。
12月25日:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 200,000円 | 売上高 200,000円 |
1月5日の請求書発行時は、すでに計上した売掛金と同一請求であることを紐付け、売上仕訳を重複登録しません。
請求書発行を証拠として保存しつつ、会計ソフトには前年計上済みであることを識別できる番号を残します。
会計ソフトと請求システムを連携している場合、翌年請求データが自動で売上仕訳を作らないよう設定・確認が必要です。
年内に全額前受け・提供は翌年
12月に10万円を受け取り、1月に商品引渡し・サービス提供を行う例です。
12月の入金時:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 100,000円 | 前受金 100,000円 |
1月の売上時:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 前受金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
前受金は売上前に受け取った負債です。入金があっただけで12月売上にしないよう、提供条件を確認します。
年内に一部前受け・残額は翌年入金
契約額10万円のうち、12月に6万円を受け取り、1月の提供完了時に残り4万円を請求する例です。
12月の前受け:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 60,000円 | 前受金 60,000円 |
1月の売上計上:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 前受金 60,000円 | 売上高 100,000円 |
| 売掛金 40,000円 |
1月の残額入金:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 40,000円 | 売掛金 40,000円 |
一部入金を売掛金のマイナス残高として放置せず、売上前なら前受金へ区分します。
年内に一部売上が成立し、残りは翌年
分納契約などで、引き渡した部分ごとに売上が成立する場合があります。総額100万円のうち、12月に40万円分、1月に60万円分を引き渡し、各部分の条件を満たした単純例です。
12月:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 400,000円 | 売上高 400,000円 |
1月:
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 売掛金 600,000円 | 売上高 600,000円 |
契約上、部分引渡しで対価請求権が確定するかを確認します。単に社内作業が40%進んだだけで、この仕訳になるとは限りません。
返品・値引きが翌年に確定する
12月売上について、1月に返品・値引きが発生した場合、当初から返品権や価格調整があったか、決算日後に新たな事象が起きたかで扱いが変わります。
決算作成時に判明している情報を整理し、前期の見積修正・後発事象・翌期の売上返品等のどれに当たるか、税理士・公認会計士へ確認してください。
法人と個人事業主の違い
法人は事業年度、個人事業主は原則として暦年で区切ります。どちらも「入金された日だけで売上を決める」とは限りません。
法人は決算日で事業年度を区切る
3月決算法人なら3月31日、12月決算法人なら12月31日が年度境界です。引渡し・役務提供の時期を確認し、当期売上と翌期売上を区分します。
法人税法22条の2や法人税基本通達には、資産販売・役務提供の収益帰属に関するルールがあります。会社が適用する会計基準と税務上の調整を確認します。
個人事業主は1月1日から12月31日で区切る
個人事業の所得税は暦年で計算します。国税庁タックスアンサー「収入金額とその計算」では、その年に収入すべき金額を計算する考え方と、一定の小規模事業者等に認められる現金主義の特例が案内されています。
通常の発生・権利確定に基づく処理では、12月に売上が成立し1月入金なら、12月31日時点の売掛金として前年分へ含めます。
現金主義の特例は要件・届出がある
一定の青色申告者は、届出により現金主義による所得計算の特例を選択できる場合があります。対象要件や届出期限があるため、単に入金日で記帳しているだけでは特例適用になりません。
自社が現金主義の特例を正式に選択しているか不明な場合は、申告書・届出書を確認し、税務署・税理士へ相談してください。
法人成りの年は個人と法人を分ける
個人事業から法人へ移行した年は、個人事業の売掛金を法人が引き継ぐのか、個人が回収するのか、譲渡・現物出資等の契約と税務処理を確認します。
入金口座だけ法人へ変え、売上・債権の帰属を曖昧にしないでください。
決算で売掛金を確認する手順
年度またぎの誤りは、請求書一覧だけでなく決算日前後の取引を両側から確認すると発見しやすくなります。
- 決算日前後の出荷・納品・検収を抽出
- 翌月発行請求書から当期売上を逆引き
- 当期発行請求書から翌期提供分を抽出
- 売掛金元帳と請求一覧を照合
- 翌期入金で期末売掛金の回収を確認
決算日前後の売上を一覧にする
決算日前後1~2か月など、会社の取引量・リスクに応じた期間を決め、出荷日、納品日、検収日、役務完了日、請求日、入金日を一行へ並べます。
金額の大きい取引、初回取引、返品条件がある取引、検収が長い取引は個別に確認します。
翌期請求から当期売上を探す
翌期最初の請求書一覧を確認し、前期中に引渡し・提供が完了していたものを抽出します。これにより、請求書が翌期だから未計上になった売上を見つけられます。
当期請求から翌期提供分を探す
当期中に請求・入金があっても、提供が翌期なら前受金等の検討が必要です。年間契約、保守、会費、制作着手金などを確認します。
売掛金元帳・残高を取引先別に照合する
売掛金の基礎と弥生会計での売掛金入力方法も参考に、売上・入金・期末残高を取引先別に確認します。
売掛金がマイナス、長期滞留、相手先不明となっている明細は原因を調査します。
翌期入金を確認する
翌期の通帳と期末売掛金を突き合わせ、請求額・入金額・名義・日付を確認します。翌期入金は期末残高の回収を確認する資料ですが、入金日を前期へ戻す処理ではありません。



翌年最初の請求書と、年末最後の納品・検収一覧を突き合わせると、請求書発行待ちの計上漏れを見つけやすくなります。
年度またぎでよくあるミス
同じ売上を二回記録するミスと、どちらの年度にも記録しないミスの両方があります。
翌年入金時に再び売上を計上する
前年に「売掛金/売上高」を登録済みなのに、翌年入金を「普通預金/売上高」とすると二重計上です。翌年入金は原則として「普通預金/売掛金」で処理します。
翌年請求書を自動連携して二重計上する
決算整理で12月売上を手入力し、1月に請求システムから同じ売上が自動連携されるケースです。決算整理仕訳へ請求番号を付け、自動連携時の消込・振替ルールを決めます。
請求書が翌年だから前年売上を計上しない
売上計上条件が前年中に満たされているなら、請求書発行が翌年でも前年売上を検討します。請求業務の遅れで売上年度を変更しないでください。
前受金を売上高にしたままにする
年内入金・翌年提供の取引を年内売上にすると、当期売上を過大計上する可能性があります。契約単位で未提供部分を確認します。
翌期首に売掛金と売上を再登録する
期末売掛金は開始残高として引き継ぎます。翌期首に「売掛金/売上高」を再登録すると、債権と売上の両方が二重になります。
翌期首の繰越残高は新しい売上ではないため、売上高を相手科目にしません。
現金主義のつもりで入金時だけ計上する
現金主義の特例には要件・届出があります。適用していない事業者が、入金日だけで売上年度を決めないようにします。



前期の決算整理仕訳と翌期の自動連携には、同じ請求番号を入れてください。二重計上の検索がしやすくなります。
年度またぎの売掛金を管理する方法
仕訳だけでなく、契約・請求・入金を同じ管理番号でつなげます。
請求番号・案件番号を仕訳へ入れる
請求書未発行の決算整理仕訳にも、仮の案件番号や受注番号を付けます。翌期に正式な請求番号が決まったら対応表を残します。
売上計上基準を文書化する
商品別に出荷基準、着荷基準、検収基準などを定め、例外条件と必要証憑を記載します。担当者や年度によって都合よく変更しないようにします。
月次でも請求前売上・前受金を確認する
年末だけ調査すると件数が多くなります。毎月、未請求売上、請求済み未提供、前受金、未消込入金を確認すれば、決算時の修正を減らせます。
売掛金内訳と残高を保存する
決算日時点の取引先別残高、請求書別明細、翌期入金を保存します。法人税申告で売掛金(未収入金)の内訳書を作る場合も、元帳との照合がしやすくなります。
年度をまたぐ売掛金の仕訳に関するよくある質問
12月の売上が1月入金の場合の仕訳は?
12月に売上計上条件を満たした場合、12月に「売掛金/売上高」、1月の入金時に「普通預金/売掛金」とします。税抜・消費税を省略した基本例です。
請求書を1月に発行したら1月売上ですか?
請求書発行日だけでは決まりません。12月に引渡し・役務提供が完了して売上が前年へ帰属するなら、請求書が1月でも12月の売上・売掛金を検討します。
12月に入金され、商品提供が1月の場合は?
売上前の入金なら、12月は「普通預金/前受金」等とし、1月に売上計上条件を満たした時点で前受金を売上高へ振り替える方法が基本例です。
翌期首に売掛金の繰越仕訳は必要ですか?
会計ソフトでは通常、前期末残高が翌期開始残高へ引き継がれます。同じ売上を翌期首に再登録しません。手動繰越の場合は前期末と翌期首の取引先別残高を一致させます。
個人事業主も年末に売掛金を計上しますか?
原則的な処理では、年内に収入すべきことが確定した未入金売上を売掛金として計上します。一定の現金主義特例を正式に選択している場合は異なるため、届出・適用状況を確認してください。
年をまたぐサービスは全額を完了時に売上計上しますか?
一律ではありません。一時点で完了する履行義務か、一定期間にわたり充足する履行義務か、進捗度を合理的に見積もれるかなどで変わります。契約と会計基準を専門家へ確認してください。
まとめ
年度をまたぐ売掛金は、入金日ではなく、商品引渡し・役務提供などの売上計上時期を先に判断します。
- 年内売上・翌年入金は年内「売掛金/売上高」
- 翌年入金は「普通預金/売掛金」
- 翌年請求でも年内売上なら決算整理を検討
- 年内前受け・翌年提供は前受金等を検討
- 期間をまたぐサービスは履行義務と進捗を確認
- 決算日前後の納品・検収・請求・入金を照合
国税庁の所得税基本通達、法人税基本通達の役務提供、収入金額とその計算を確認し、自社の契約・会計方針に合う年度へ計上してください。

