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売掛金の支払期日を過ぎたときは、契約に定めた遅延損害金率があればその内容を確認し、定めがなければ民法上の法定利率を基礎に請求可否と金額を検討します。法務省によると、2026年4月1日から2029年3月31日までの民法上の法定利率は年3%です。
遅延損害金の概算は「未払元本×年率×遅延日数÷365日」で求められます。ただし、起算日、端数、うるう年、途中入金、契約利率、適用法令によって結果が変わるため、請求書を送る前に契約書と入金履歴を確認してください。
- 売掛金の遅延損害金が発生する基本条件
- 2026年時点の法定利率と計算例
- 契約利率・取適法等との関係
- 消費税区分と受取時の仕訳
- 請求・交渉・証拠保存の実務手順
本記事は日本国内の一般的な民事・商事取引を前提とした情報です。消費者契約、金銭貸借、下請取引・取適法の対象取引、国・自治体との契約、海外取引、契約上の違約金には別の規定が適用される場合があります。具体的な請求、相殺、訴訟、税務処理は弁護士・税理士等へ確認してください。
売掛金の遅延損害金とは
遅延損害金は、金銭債務の支払いが期限に遅れたことによる損害を金銭で評価したものです。元の売掛金とは別に発生し得ますが、請求できる条件と金額は契約・法令・事実関係で決まります。
売掛金の元本とは別の請求
たとえば、商品代金100万円の支払期日を過ぎた場合、請求の中心は元本100万円です。遅延損害金は、支払遅延期間に応じて元本へ加算する付随的な請求です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 元本 | 未払いの商品・サービス代金 |
| 遅延損害金 | 支払遅延期間に応じた損害金 |
| 回収費用等 | 契約・法令・実費・相当性の確認が必要 |
「遅延手数料」「延滞利息」「違約金」など名称が違っても、法的・税務上は実質で判断されます。
支払期日が明確な取引
契約書・発注書・請求書等で支払期日が確定している場合、一般には期日を過ぎて支払われない時点から履行遅滞の問題になります。起算日は契約文言や期日の定め方により確認が必要ですが、日付で定めた支払期日の翌日から数える例が多くあります。
請求書に支払期日を書いただけで、契約上合意した期日になるとは限りません。基本契約、個別注文、検収条件、締め支払条件を合わせて確認してください。
支払期日を定めていない取引
期限の定めがない債務では、請求・催告の到達等と履行遅滞の関係を個別に確認する必要があります。請求書を発行した日から自動的に遅延損害金が発生すると決めつけないでください。
支払期日が曖昧なら、先に元本・支払期限・振込先を明示した書面を送り、到達記録を残します。
遅延損害金と取適法の遅延利息は分ける
旧下請法から改正された取適法等の対象取引では、支払遅延に関する特別な義務・遅延利息が問題になる場合があります。一般の民法上の年3%だけで処理してよいとは限りません。
取適法・下請取引の遅延利息14.6%は既存記事で詳しく解説しています。まず対象取引・事業者要件を判定し、本記事の一般取引と混同しないでください。
小谷良太計算より先に、支払期日と適用ルールを確定しましょう。一般取引、取適法、消費者契約では、確認すべき上限や利率が異なります。
2026年の法定利率と契約利率
民法の法定利率は変動制です。古い契約書や過去の記事にある年5%を、そのまま2026年の新しい遅延へ使わないようにします。
2026年4月1日から2029年3月31日は年3%
法務省は、民法404条に基づく法定利率について次の期間を公表しています。
| 期間 | 法定利率 |
|---|---|
| 2020年3月31日まで | 年5% |
| 2020年4月1日〜2023年3月31日 | 年3% |
| 2023年4月1日〜2026年3月31日 | 年3% |
| 2026年4月1日〜2029年3月31日 | 年3% |
| 2029年4月1日以降 | 未確定 |
2026年4月1日以降も基準割合の変動が所定幅に達しなかったため、年3%のまま据え置かれています。
どの時点の法定利率を使うか
民法419条は、金銭債務の不履行による損害賠償額について、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率を基準とする仕組みを定めています。
長期延滞中に法定利率の期間が変わっても、単純に年度ごとへ分割して新しい率を当てるとは限りません。遅滞責任が始まった日を確定し、当時の法令を確認します。
契約に遅延損害金率がある場合
基本契約書、利用規約、発注書等に遅延損害金率が定められている場合、まず合意の成立、対象債務、起算日、計算方法を確認します。
- 「年14.6%」等の率
- 1年を365日とするか
- 支払期日の翌日を起算日とするか
- 日割り・月割り
- 端数処理
- 一部入金時の充当順序
- 上限・適用除外
契約率があっても、消費者契約法、利息制限法その他の強行法規や公序良俗等との関係で無制限に有効とは限りません。相手方・取引類型・率を弁護士等へ確認してください。
契約利率が法定利率より低い・高い場合
契約で有効な利率を合意している場合は、その合意内容が計算の出発点になります。法定利率は、契約で定めがない場面等で使われる基準です。
請求書へ後から高い率を書き足すだけで、相手方との契約合意が成立するわけではありません。取引開始前に基本契約へ条件を定め、双方の合意記録を残します。
- 適用法令・取引類型
- 契約書の遅延損害金条項
- 支払期日と遅滞開始日
- 契約率の有効性・上限
- 法定利率が必要となる時点
- 途中入金・相殺・端数のルール
遅延損害金の計算方法
基本式は単純でも、元本・日数・年率のどれかを誤ると請求額が変わります。計算根拠を相手方が検算できる明細にします。
基本の計算式
一般的な日割り概算は次のとおりです。
遅延損害金=未払元本×年率×遅延日数÷365日
元本100万円、年3%、30日遅延という架空例では次のようになります。
1,000,000円×3%×30日÷365日=約2,465円
端数処理は契約・請求方針に従います。裁判手続や契約で別の計算方法が指定される場合もあるため、最終請求では根拠を確認してください。
遅延日数の数え方
支払期日が7月31日、8月30日までの遅延を計算する例では、一般に8月1日から8月30日までの30日を数える考え方があります。ただし、最終日を含めるか、休日の扱い、支払完了時点は契約と適用ルールで確認します。
銀行休業日が支払期日に当たる場合も、自動的に翌営業日でよいとは限りません。契約の休日条項、慣行、特別法を確認します。
一部入金がある場合
元本100万円に対して途中で40万円が入金されたなら、入金日以降の計算対象元本は、充当関係を確認したうえで残額へ変わります。
| 期間 | 計算対象元本 | 日数 | 年率 |
|---|---|---|---|
| 遅滞開始〜一部入金前日 | 1,000,000円 | A日 | 3% |
| 一部入金日以後〜計算日 | 600,000円等 | B日 | 3% |
入金を元本、利息、費用のどれへ充当するかで残元本が変わる場合があります。契約・合意・民法上の充当ルールを確認してください。
複数請求書は請求書ごとに計算する
支払期日と元本が異なる請求書を一括し、最も古い日から全額へ利率を掛けると過大請求になります。
請求書番号、元本、支払期日、起算日、計算終期、日数、率、損害金を行別に記載し、最後に合計します。
うるう年・端数・計算終期
年366日で割るか365日で割るか、円未満を切り捨てるか、支払日当日を含めるかは、契約や請求・裁判上の計算方法によって確認が必要です。
計算書には採用した分母、端数処理、起算日、計算終期を明記します。金額だけを請求すると、相手方が差異理由を確認できません。
遅延損害金の消費税と仕訳
遅延損害金の消費税区分は、名称ではなく支払いの原因と実質で判断します。また、会計上いつ収益認識するかは、請求権の確定・回収可能性・重要性等を踏まえて決めます。
消費税は名称ではなく実質で判断する
国税庁は、心身または資産への損害の発生に伴って受ける損害賠償金は、通常は資産の譲渡等の対価に当たらないと説明しています。一方、損害賠償金という名称でも、実質的に資産の譲渡・貸付け・役務提供の対価なら課税対象となる例があります。
また、売掛債権とは別に請求する利子については、利子を対価とする金融取引として非課税となる国税庁の説明があります。
したがって、遅延損害金を一律に「課税」「非課税」「不課税」と決めず、次を確認します。
- 真に支払遅延への損害賠償か
- 元の売上対価の追加分か
- 支払猶予・金融の対価としての利子か
- 再請求手数料等の役務料金が含まれるか
- 契約書と請求書で区分されているか
税区分が不明な場合は、契約と計算書を税理士等へ提示してください。
受取時の仕訳例
遅延損害金2,465円を普通預金で受け取り、雑収入で処理する架空例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 2,465円 | 雑収入 | 2,465円 |
「受取利息」「雑収入」等の科目候補があります。税区分は上記の実質判断と合わせ、継続して使用します。元の売掛金100万円を回収した仕訳とは分けると明細が追いやすくなります。
決算時に未収計上する場合
期末までに遅延損害金の請求権・金額が確定し、重要性や回収可能性を踏まえて収益計上する場合は、「未収入金/雑収入」等の処理が考えられます。ただし、係争中、請求放棄を検討中、相手方が争っている場合に機械的な見積計上をすると、回収不能の収益を先に認識するおそれがあります。
会計基準、法人税・所得税上の収益計上時期、重要性を税理士・公認会計士等へ確認してください。
元本の消費税処理と混ぜない
元の売上代金に含まれる消費税と、遅延損害金の税区分は別に確認します。回収が遅れても元の売上に対する消費税申告が自動的に先送りされるわけではありません。
年度をまたぐ売掛金の仕訳と売掛金が回収不能になった場合も参照し、売上、貸倒れ、遅延損害金を分けます。
- 元取引の契約書・発注書
- 請求書・納品書・検収資料
- 支払期日を示す資料
- 遅延損害金の計算書
- 相手方との合意・交渉記録
- 元本・損害金の入金明細
- 採用した勘定科目・税区分の根拠



遅延損害金という名前だけで税区分を決めないでください。元本、損害金、再請求手数料を分け、契約上の実質を税理士と確認するのが安全です。
遅延損害金を請求する手順
遅延損害金の請求より元本回収を遅らせない順序が重要です。請求できる可能性があっても、取引継続、相手方の資金状況、回収コスト、証拠の強さを考慮します。
1. 契約・支払期日・検収を確認する
契約主体、対象取引、納品・検収、請求書送付、支払期日、休日条項、遅延損害金条項を確認します。相手方が「検収未了」「請求書未着」を主張する場合は、先に元本の履行期を確定します。
2. 入金漏れ・相殺・返品を確認する
別口座への入金、振込名義違い、相殺、返品・値引き、振込手数料控除がないかを調べます。売掛金の消込を済ませ、実際の未払元本だけを計算対象にします。
3. 元本の支払確認を先に連絡する
初回連絡では、請求書番号、元本、支払期日、未入金事実、振込先、回答期限を簡潔に伝えます。連絡先・担当者・請求書の受領状況を確認し、単純な事務ミスなら早期入金へつなげます。
4. 計算書を作成する
次の項目を1枚で検算できるようにします。
- 請求書番号・元本
- 契約上の支払期日
- 起算日・計算終期
- 遅延日数
- 契約条項または法定利率の根拠
- 計算式・端数処理
- 一部入金・相殺
- 元本と遅延損害金の合計
5. 書面で請求し到達記録を残す
メール、書面、内容証明郵便等の方法は、金額・緊急性・証拠化の必要性で選びます。内容証明郵便は文書内容と差出日等の記録には役立ちますが、記載内容の正しさや支払義務を郵便局が認めるものではありません。
6. 分割・猶予の合意を文書化する
相手方から分割払いや猶予の申出があれば、残元本、損害金、支払日、充当順序、期限の利益、再度遅延した場合の扱い等を文書化します。高額・長期・紛争性がある場合は弁護士へ相談します。
7. 交渉と法的手続の費用対効果を判断する
遅延損害金の請求に固執して元本回収が遅れる、取引先の資金繰りを悪化させる、交渉費用が損害金を上回ることもあります。債権管理方針に沿って、免除・一部免除を含む合意の承認権限を決めます。
元本回収、取引継続、遅延損害金、法的コストを並べ、会社として優先順位を決めてください。



遅延損害金の計算が正しくても、回収戦略が正しいとは限りません。まず元本の入金可能日を確認し、交渉記録と承認を残して進めましょう。
売掛金の遅延損害金に関するよくある質問
2026年の法定利率は何%ですか?
法務省によると、2026年4月1日から2029年3月31日までの民法上の法定利率は年3%です。ただし、契約利率や取適法等の特別なルールが適用される場合があるため、取引類型と契約条項を確認してください。
契約書に遅延損害金の記載がなくても請求できますか?
契約に定めがなくても、金銭債務の履行遅滞について民法上の損害賠償を請求できる場合があります。ただし、支払期日、遅滞開始日、適用利率、相手方の主張等を確認する必要があるため、個別案件は弁護士等へ相談してください。
遅延損害金はいつから数えますか?
支払期日が日付で確定している取引では、一般に期日の翌日から数える例があります。ただし、期限の定め方、休日条項、検収条件、請求の到達、特別法によって異なるため、契約書と事実経過を確認してください。
売掛金の遅延損害金に消費税はかかりますか?
一律には判断できません。真の損害賠償金は通常、資産の譲渡等の対価に当たりませんが、名称にかかわらず実質が役務や資産の対価なら課税対象となる場合があります。利子としての性質も含め、契約と請求内容を税理士等へ確認してください。
遅延損害金を請求しないと問題がありますか?
一般取引では、取引継続や回収可能性を踏まえて請求・免除を判断する場面があります。ただし、取適法等で遅延利息の支払義務が問題となる取引や、社内承認が必要な債権放棄は別途確認してください。
途中で一部入金があった場合はどう計算しますか?
一部入金前後で計算対象元本を分けます。ただし、入金を元本・利息・費用のどれへ充当するかで残元本が変わる場合があるため、契約・合意・法令上の充当関係を確認して期間別の計算書を作成してください。
まとめ
売掛金の遅延損害金は、支払期日、遅滞開始日、契約条項、適用法令を確定してから計算します。2026年4月1日から2029年3月31日までの民法上の法定利率は年3%ですが、契約利率や取適法等が優先・併存する場合があります。
計算書には元本、起算日、終期、日数、率、端数、一部入金を明記してください。消費税区分と収益計上も名称だけで決めず、損害賠償・利子・役務対価の実質を確認します。請求時は元本回収を優先し、交渉・免除・法的手続を社内承認と専門家確認のもとで進めます。

