本記事は広告・PRを含みます。融資、返済条件変更、税・社会保険料、経営改善・再生の対応は会社ごとに異なります。金融機関、税理士・公認会計士、認定経営革新等支援機関、中小企業活性化協議会等へ早めに相談してください。
赤字決算後に最優先するのは、節税や見栄えではなく「現金がいつ尽きるか」を特定することです。 赤字でも預金と資金調達余力があれば直ちに倒産するわけではなく、黒字でも返済や在庫増で現金が尽きれば支払いはできません。
したがって、損益改善と資金繰り改善を分け、30日・60日・90日の期限を置いて進めます。30日までに資金ショートを止め、60日までに毎月の流出原因を削り、90日までに金融機関へ説明できる改善計画へ落とすのが基本です。
- 今日使える預金・現金
- 13週間の入金予定と支払予定
- 最も残高が低くなる日と不足額
- 給与、税・社会保険料、仕入、借入返済の期日
- 売掛金の遅延・回収懸念額
- 追加借入、当座貸越、経営者借入等の利用余地
赤字決算と資金繰り悪化は同じではない
赤字は一定期間の収益より費用が多い状態です。一方、資金繰り悪化は、支払日に使える現金が不足する状態を指します。
| 状態 | 利益 | 現金 | 主な確認 |
|---|---|---|---|
| 赤字だが資金はある | マイナス | 当面あり | 赤字の原因と改善期限 |
| 黒字だが資金がない | プラス | 不足 | 売掛金・在庫・返済・設備投資 |
| 赤字で資金もない | マイナス | 不足 | 緊急資金と事業再生 |
| 黒字で資金もある | プラス | 余裕あり | 変動耐性と成長資金 |
日本政策金融公庫も、利益と現金がずれる要因として、発生主義、売掛金・在庫、借入元金返済などを説明し、決算書だけでなく資金繰り表や通帳の動きを見る重要性を示しています。
「赤字だから借りられない」と決めつけることも、「売上が戻れば大丈夫」と見込みだけで先延ばしすることも避けます。 融資の可否は赤字理由、改善可能性、返済原資、債務状況などを含めて判断されます。赤字時の融資論点は「赤字決算でも融資は可能?」で詳しく整理しています。
0〜30日:資金ショートを止める
1. 13週間資金繰り表を作る
月次表ではなく週次、危険な週は日次で作ります。確定支出を先に置き、売掛金入金を確度別に分けます。作成方法は「資金繰り表の作り方」を参照してください。
2. 支払いを優先度別に分ける
給与、税・社会保険料、仕入、家賃、借入返済などを、期日・法的義務・事業継続への影響で整理します。会社だけの判断で未払い・遅延を決めず、相手や専門窓口へ事前に相談します。
3. 売掛金を回収可能日へ直す
請求書に書いた期日をそのまま使わず、入金実績、検収、請求漏れ、相手の回答を確認します。遅延債権は楽観的な予定から外し、支払約束を日付で記録します。
長期化した債権の管理は「売掛金滞留とは」、未払い対応は「売掛金を払ってくれないとき」を参考にしてください。
4. 金融機関へ早めに事実を伝える
資金が尽きる直前では選択肢が狭まります。 次をそろえ、赤字理由と改善策を説明します。
- 直近3期の決算書・申告書
- 最新試算表
- 13週間資金繰り表
- 借入一覧と返済予定
- 売掛金・買掛金・在庫の一覧
- 赤字要因を分けた資料
- 必要資金額、資金使途、返済原資
5. 緊急の資金調達を比較する
融資、当座貸越、制度融資、資産売却、経営者からの借入、正常な売掛債権のファクタリングなどを比較します。実行までの日数、手取額、金利・手数料、担保・保証、将来キャッシュフローへの影響を並べてください。
短期資金で30日を乗り切れても、翌月また同額が不足するなら解決ではありません。 ファクタリングを使う場合も、手数料と将来入金減少を反映します。
31〜60日:毎月の資金流出を減らす
赤字を要因別に分ける
「売上不足」で一括りにせず、次のように分解します。
| 要因 | 確認指標 | 主な対策例 |
|---|---|---|
| 数量減 | 顧客数・受注数・稼働率 | 失注理由、既存顧客、チャネル |
| 単価不足 | 商品別単価・値引率 | 価格改定、不採算条件見直し |
| 粗利不足 | 商品・案件別粗利 | 原価、仕入、外注、赤字受注停止 |
| 固定費過多 | 損益分岐点・固定費率 | 契約、拠点、サブスク見直し |
| 回収長期化 | 売掛金回転日数 | 締日・支払条件・督促 |
| 在庫過多 | 在庫回転日数・滞留在庫 | 発注量、処分、SKU削減 |
| 返済負担 | 元金返済額・CF | 借入構成、返済相談 |
現金効果と利益効果を分ける
在庫を処分すれば現金化できますが、値下げ損が出る場合があります。設備投資を止めれば現金流出は減りますが、当期利益へ直ちに同額の効果が出るとは限りません。借入元金の返済は現金を減らしますが、損益計算書の費用ではありません。
各施策を「いつ現金が増えるか」「月次利益がいくら改善するか」「一回限りか継続か」の3列で評価します。
回収・在庫・支払条件を見直す
運転資金は、売掛金と在庫が増え、買掛金等が減るほど多く必要になります。回収サイト短縮、請求の早期化、在庫削減、仕入条件の交渉を行いますが、取引先へ一方的な不利益を押し付けないよう注意してください。
基本の計算は「運転資金とは」で確認できます。
61〜90日:改善計画を金融機関と共有する
3つのシナリオを作る
売上や粗利を1本の予想だけにせず、標準・下振れ・改善の3シナリオを作ります。少なくとも次を月別に示します。
- 売上高、粗利益、営業利益
- 売掛金回収、在庫、買掛金支払
- 設備投資、借入実行・返済
- 月末預金残高
- 主要施策と責任者、期限
改善策を数字と担当者へ落とす
「営業強化」「経費削減」では実行管理できません。 「上位20社へ価格改定を9月末までに提示」「滞留90日超在庫を10月までに500万円圧縮」のように、対象・金額・期限・担当者を決めます。
外部支援を使う
中小企業基盤整備機構は、資金繰り管理や採算管理などの早期改善が必要な事業者について、認定支援機関が資金実績・計画表等の策定を支援する仕組みを案内しています。中小企業庁の中小企業活性化協議会では、収益力低下や借入増で資金繰りが悪化し、自力での再生が難しい企業へのプレ再生・再生支援も案内しています。
返済条件の見直しが必要な場合は、追加融資との関係も含めて「リスケ中の追加融資」を確認し、早めに金融機関へ相談してください。
やってはいけない対応
売上見込みだけで不足を埋める
未受注案件や遅延債権を確定入金として扱うと、対策開始が遅れます。資金繰り表では確度を分けます。
赤字受注を増やす
売上を増やしても、粗利がなく、仕入・外注・人件費が先行すれば資金繰りは悪化します。案件別の限界利益と回収条件を確認します。
税金や社会保険料を無断で滞納する
納付が難しい場合は放置せず、期限前に税務署・年金事務所等へ相談します。猶予の要件や手続は個別に確認してください。
高コストの調達を繰り返す
短期調達の手数料を次の短期調達で埋める状態は、将来入金を削ります。資金調達と同時に固定費・粗利・運転資金を改善します。
30・60・90日のチェックリスト
- 30日:不足日・不足額確定、支払優先順位、金融機関相談、緊急資金
- 60日:商品別・顧客別採算、固定費、回収・在庫・支払条件の改善
- 90日:月次計画、3シナリオ、施策KPI、金融機関との共有・モニタリング
毎週、実績と計画の差を更新します。 予測が外れた場合は、数字を上書きするだけでなく、数量、単価、粗利率、回収日、支払日のどれが原因かを記録してください。
よくある質問
Q: 赤字決算だと必ず融資を断られますか?
A: 必ずではありません。赤字理由、一過性か継続か、返済原資、債務状況、改善計画などを含めて判断されます。
Q: 赤字と資金不足は同じですか?
A: 同じではありません。赤字は利益のマイナス、資金不足は支払日に使える現金がない状態です。両方を別々に確認します。
Q: 最初に何か月分の資金繰りを作ればよいですか?
A: 緊急時は13週間を週次で作り、危険な週は日次にします。その後、月次で1年程度の改善計画へつなげます。
Q: 固定費削減と売上拡大はどちらが先ですか?
A: 資金が尽きる時期と効果発生日で判断します。すぐ効く流出抑制と、粗利を生む売上施策を並行し、不採算売上は増やさないことが重要です。
Q: ファクタリングで赤字を解消できますか?
A: 売掛金の入金を早める手段であり、赤字そのものを解消するものではありません。手数料と次回以降の資金繰りを確認します。
Q: 返済が難しい場合はいつ銀行へ相談しますか?
A: 延滞する前に、資金繰り表、借入一覧、改善策を用意して相談します。直前になるほど選択肢が狭まる可能性があります。
まとめ
赤字決算後は、まず13週間の資金繰りで不足日と不足額を特定します。30日までに資金ショートを止め、60日までに粗利・固定費・回収・在庫・返済負担を見直し、90日までに月次計画とKPIを作ります。
赤字の説明だけでなく、現金がいつ、いくら不足し、どの施策でいつ改善するかを示すことが重要です。 早い段階で金融機関や支援機関と共有してください。
