本記事は広告・PRを含みます。給与・社会保険料・源泉所得税等の支払いや猶予、融資の可否は個別事情で異なります。労務は社会保険労務士・労働基準監督署等、税務は税理士・税務署、資金調達は金融機関や専門家へ確認してください。
人件費の資金繰りは、月次損益ではなく「給与振込日までに口座へいくら必要か」を週単位で管理するのが基本です。 給与だけを見ても、会社負担の社会保険料、賞与、住民税、源泉所得税、外注費などが別日に出ていけば、予想より早く資金が底をつきます。
そこで有効なのが、今日から13週間先までの入出金を並べる短期資金繰り表です。先に給与日と法定支払日を固定し、確度の低い売上を後から入れると、資金不足を楽観的に見積もりにくくなります。
- 毎月の給与振込日
- 賞与の支給予定日
- 社会保険料の納付日
- 源泉所得税・住民税の納付日
- 大口の売掛金入金日と借入返済日
人件費の資金繰りで数える範囲
資金繰り表の「人件費」は、損益計算書の給与手当と同じ金額とは限りません。実際に口座から出る日と金額で、次の項目を分けます。
| 項目 | 資金繰り表へ置く日 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 給与・役員報酬 | 実際の振込日 | 手取りだけでなく振込総額を確認 |
| 賞与 | 支給日 | 賞与分の社会保険料も後から発生 |
| 社会保険料 | 実際の口座振替・納付日 | 従業員負担分と会社負担分を合わせる |
| 源泉所得税 | 納付期限・予定日 | 納期特例の有無を区別 |
| 住民税 | 特別徴収の納付日 | 給与天引き後の納付を忘れない |
| 外注費 | 契約上の支払日 | 実態が雇用なら別の論点がある |
| 採用費・派遣料 | 請求書の支払日 | 入社月と請求月がずれる |
厚生労働省は、賃金を通貨で、直接、全額、毎月1回以上、一定の期日に支払う「賃金支払の5原則」を案内しています。資金が足りないからと会社だけの判断で給与を後ろ倒しにする前に、専門家や行政窓口へ相談してください。
日本年金機構によると、健康保険・厚生年金保険料は、給与等から差し引いた被保険者負担分と事業主負担分を合わせ、原則として納付対象月の翌月末日までに納めます。給与振込後の預金残高を「余ったお金」と考えると、月末の社会保険料で不足しやすくなります。
13週間資金繰り表の作り方
1. 起点残高を通帳と一致させる
表の最初に、資金移動に使える普通預金・当座預金・手元現金を置きます。定期預金、拘束性預金、用途が決まった預り金などは、自由に使えるかを分けてください。
会計ソフトの残高と通帳がずれている場合は、未記帳、未取付小切手、口座振替前のデータなどを確認します。起点が違えば、13週間すべてが同じだけずれます。
2. 確定支出を先に入力する
給与、社会保険料、税金、家賃、借入返済、リース、カード引落しなど、日付と金額がほぼ確定している支出を先に入れます。
- 給与・賞与
- 社会保険料・税金
- 家賃・借入返済・リース
- 買掛金・外注費
- その他の経費
- 売掛金入金・借入等の収入
支出を先に置くのは、売上見込みで不足を隠さないためです。支払日が週末・祝日に重なる場合は、実際の振込日・口座振替日を確認します。
3. 入金を確度別に分ける
売掛金は「請求済みで入金日確定」「請求済みだが遅延懸念あり」「未受注・見込み」のように分けます。未受注案件を確定入金と同じ扱いにしないでください。
売掛金の残高確認には「売掛金元帳の作り方」、請求から入金までの関係は「売掛金と請求書」も参考になります。
4. 各週の週末残高を計算する
計算は単純です。
前週末残高+当週収入-当週支出=当週末残高
ただし、週末残高がプラスでも、火曜日に給与、金曜日に入金なら火曜日に一度不足します。重要な週は日別内訳も作ります。
5. 最低必要残高を設定する
残高ゼロを限界にすると、入金の1日遅れや急な修繕で資金ショートします。最低必要残高は、次回給与、社会保険料、直近の固定支出などを基準に会社ごとに決めます。
「マイナスになる週」だけでなく、「最低必要残高を下回る週」を資金対策の期限として管理します。
13週間資金繰りの記入例
起点残高が600万円、給与が毎月25日に350万円、社会保険料が月末に110万円、売掛金入金が月末に400万円の会社を例にします。
| 週 | 主な収入 | 主な支出 | 週末残高 |
|---|---|---|---|
| 第1週 | 100万円 | 80万円 | 620万円 |
| 第2週 | 150万円 | 120万円 | 650万円 |
| 第3週 | 50万円 | 100万円 | 600万円 |
| 第4週 | 400万円 | 給与350万円・その他90万円 | 560万円 |
| 第5週 | 80万円 | 社会保険110万円・家賃70万円 | 460万円 |
月末だけを比べると600万円から460万円への減少ですが、第4週の入金が翌週へずれると、給与支払直後の残高は大きく下がります。売上が計上されていても、入金日まで給与には使えません。
月単位の全体像を作る方法は「資金繰り表の作り方」、予測がずれる原因は「資金繰り予測が外れる原因」で整理しています。
人件費が足りないと分かったときの優先順位
1. 金額と期限を確定する
「来月が厳しい」では、対策を選べません。最も残高が低くなる日、不足見込額、最低必要残高との差、確定入金と未確定入金を数字にします。
2. 回収予定を早められるか確認する
請求漏れ、検収待ち、請求書の不備、入金消込漏れを確認します。取引先へ一方的に早期払いを求めるのではなく、契約と関係性に沿って相談します。
3. 支出を延期・削減できるか分ける
広告、設備購入、任意の投資など、契約上延期できる支出を分けます。給与や税・社会保険料を無断で遅らせる対策と混同しないでください。
4. 早めに金融機関へ相談する
融資は審査と契約に時間がかかります。13週間表、直近試算表、資金使途、返済原資、売掛金一覧を用意し、不足日の前に相談します。赤字の場合の説明は「赤字決算でも融資は可能?」も参考になります。
5. 売掛債権の早期資金化を比較する
正常な売掛債権があり、融資の実行が間に合わない場合は、ファクタリングも選択肢です。ただし、手数料分だけ将来入金が減ります。受取額、入金日、償還請求権の有無、債権譲渡登記・通知、契約条件を比較してください。
ファクタリングは赤字の根本原因を直すものではありません。13週間表へ手数料と将来の入金減少を反映し、給与支払い後も資金が回るかを確認します。 基本は「ファクタリングとは」で解説しています。
毎週更新するときのルール
資金繰り表は作って終わりではありません。毎週、実績を入れて13週目を追加します。
- 予定と実績の差を記録する
- 入金遅延は翌週へ移すだけでなく理由を残す
- 給与・社会保険料の見込みを最新人数へ直す
- 採用・退職・残業・賞与を反映する
- 最低残高を下回る日と対策責任者を決める
差額の理由が「売上不足」なのか「回収遅延」なのか「人員増」なのかで、取るべき対策は変わります。
よくある質問
Q: 13週間資金繰り表はなぜ13週間なのですか?
A: 約3か月先までを週単位で見られ、給与・社会保険料・税金など複数回の支払周期を捉えやすいためです。会社に合わせて日別・週別・月別を併用します。
Q: 人件費には会社負担の社会保険料も含めますか?
A: 資金繰りでは含めます。ただし給与振込日とは別の納付日になるため、同じ行へまとめず支払日別に置くと不足日が見えます。
Q: 売上見込みはどこまで入れてよいですか?
A: 受注・請求・検収・入金日の確度で区分します。未受注案件を確定入金と同じ前提にすると、資金不足を過小評価します。
Q: 給与支払日を会社判断で延期できますか?
A: 賃金には一定期日払い等の原則があります。資金難だけを理由に安易に延期せず、早急に専門家や労働基準監督署等へ相談してください。
Q: 社会保険料の納付日はいつですか?
A: 日本年金機構は原則として納付対象月の翌月末日と案内しています。休日や実際の口座振替日は通知等で確認してください。
Q: 人件費不足にファクタリングを使えますか?
A: 審査対象となる正常な売掛債権があれば選択肢になり得ます。ただし手数料と将来入金の減少を13週間表へ反映して判断します。
まとめ
給与・社会保険料の資金繰りは、損益ではなく実際の支払日から逆算します。起点残高を合わせ、確定支出を先に置き、入金を確度別に分け、週末残高と最低必要残高を比べてください。
不足が見つかったら、金額と期限を確定し、請求・回収、延期可能な支出、融資、売掛債権の早期資金化を順に検討します。 早く見つけるほど、選べる対策は増えます。
