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請求額10万円に対して振込手数料550円を差し引いた9万9,450円が入金された場合、売掛金は10万円全額を消し込み、差額550円を契約と経理方針に応じて売上値引や支払手数料等で処理します。入金額だけを「普通預金/売掛金」で登録すると、回収済みなのに売掛金550円が残ります。
インボイス制度では、売手負担の振込手数料相当額を「売上げに係る対価の返還等」とするのか、「課税仕入れ」とするのかで必要な保存書類と税区分が変わります。税込1万円未満の返還インボイス交付義務免除は、売上値引等の対価返還として扱う場合のルールです。
- 振込手数料を差し引かれた売掛金の基本仕訳
- 売上値引と支払手数料で処理する違い
- 税込1万円未満の返還インボイス免除
- 差額消込・部分入金・原因不明差額の区別
- 契約・取適法・会計ソフトで確認する項目
本記事の仕訳は税抜・税込経理や端数処理を簡略化した一般例です。契約上の負担者、取引の税率、課税・免税、インボイス登録状況、媒介・代理受領、取適法の適用などで処理は変わります。実際の申告・契約は税理士、弁護士等へ確認してください。
売掛金から振込手数料を差し引かれたときの基本
売掛金の請求額と銀行への入金額が違う場合、差額の理由を特定してから仕訳します。「数百円だから手数料」と自動判定すると、値引き、源泉所得税、相殺、部分入金を誤って処理する可能性があります。
請求額と入金額の差額を確認する
請求額100,000円、入金額99,450円なら差額は550円です。
差額=請求額100,000円-入金額99,450円=550円
次の資料を同じ請求番号で照合します。
- 取引基本契約・発注書の振込手数料負担条項
- 請求書に記載した振込条件
- 入金明細・振込依頼人名
- 取引先から届いた支払明細
- 過去の同一取引先の入金実績
差額が銀行の振込手数料相当額と一致しても、取引先が一方的に別の金額を控除した可能性があります。契約上の合意がなければ、まず支払担当者へ確認します。
売掛金は請求額全額を消し込む
売手が差額550円を負担することに合意し、売上値引として処理する単純例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 99,450円 | 売掛金 | 100,000円 |
| 売上値引 | 550円 |
支払手数料として処理する場合の表示例は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 99,450円 | 売掛金 | 100,000円 |
| 支払手数料 | 550円 |
どちらも借方合計と貸方合計は10万円です。会計ソフトでは、入金額9万9,450円と差額550円を同じ売掛金10万円へひも付け、回収後残高を0円にします。
入金額だけを登録すると未回収残高が残る
次の仕訳だけでは売掛金が550円残ります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 99,450円 | 売掛金 | 99,450円 |
実際に追加回収する予定があるなら部分入金として正しい場合もあります。しかし売手が手数料を負担して回収完了なら、残った550円は架空の未回収残高です。
売掛金残高を0円にすることと、差額の税務区分を正しく記録することを別々に確認してください。
売掛金の消込では、請求と入金を対応させる基本手順を解説しています。
振込手数料は誰が負担するのか
会計処理の前に、取引当事者のどちらが振込費用を負担する契約かを確認します。
民法上の原則と契約条件
民法485条は、弁済の費用について別段の意思表示がないときは債務者の負担とすることを定めています。ただし、債権者が住所移転等により費用を増加させた場合の増加額は債権者負担です。
実務では、契約書や請求書に「振込手数料は買手負担」「振込手数料を差し引いて支払う」などの取り決めを置くことがあります。合意内容が優先されるため、民法の原則だけで仕訳を決めません。
買手負担なら請求額どおり入金される
買手が振込手数料を負担する場合、売手の口座には請求額全額が入金されます。買手は銀行へ支払った手数料を自社の費用として処理し、売手側は通常の入金仕訳を行います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 |
売手側には振込手数料の差額がないため、売上値引や支払手数料は計上しません。
売手負担なら差額の法的・会計的性質を決める
売手負担には、買手が銀行へ支払った手数料相当額を売上代金から差し引く運用があります。この差額を次のどれとして扱うかを統一します。
- 売上値引等の「売上げに係る対価の返還等」
- 買手から受けた役務の対価である課税仕入れ
- 買手による銀行手数料の立替払い・代理受領
名称を「支払手数料」にしても、消費税法上は売上対価の返還と整理する方法があります。勘定科目名と税区分は必ずしも一対一ではありません。
取適法の対象取引は一方的な控除を避ける
製造委託、情報成果物作成委託、役務提供委託等で取適法の対象になる場合、発注後に受注側の合意なく振込手数料を代金から控除する運用は別の法的確認が必要です。
負担者を契約で定め、発注時の代金額と実際の支払額を一致させます。詳細は取適法と振込手数料負担で整理しています。
- 差額が本当に振込手数料相当額か
- 契約で誰が負担すると定めたか
- 取適法等の対象取引ではないか
- 売上返還・課税仕入れ・立替のどれで処理するか
- 必要なインボイスと帳簿記載を保存できるか
小谷良太差額が毎回同じでも、自動的に支払手数料へ入れないでください。契約上の負担者と消費税上の性質を一度決め、取引先別ルールとして残します。
インボイス制度での処理
インボイス制度では、売手が負担した振込手数料相当額をどの取引として記録するかが重要です。
売上値引なら売上げに係る対価の返還等
売手が請求額の一部を値引いたと整理する場合、その差額は売上げに係る対価の返還等です。元の売上に適用した税率に従い、売上返還の税区分で帳簿へ記録します。
軽減税率8%の売上と標準税率10%の売上をまとめて請求している場合、差額をどの売上へ対応させるかを合理的に整理し、税率別に記録します。
税込1万円未満なら返還インボイスの交付義務が免除
国税庁の「少額な返還インボイスの交付義務免除」では、税込1万円未満の売上げに係る対価の返還等について、返還インボイスの交付義務を免除しています。
国税庁は、売手が負担する振込手数料相当額を売上値引として処理する場合、通常は税込1万円未満になるため、この免除の対象になる例を示しています。
この免除は2023年10月1日以降の課税資産の譲渡等に係る対価返還に適用され、適用期限や対象者の特段の制限はないと案内されています。
「振込手数料なら何でもインボイス不要」ではなく、税込1万円未満の対価返還として処理する場合に返還インボイスの交付が免除されます。
支払手数料の科目でも売上返還として管理できる
国税庁は、経理上の科目を支払手数料としつつ、消費税法上は売上げに係る対価の返還等とする方法も示しています。この場合は、通常の支払手数料と判別できる専用コードを用意するなど、売上返還と分かるように記録します。
元の売上税率に応じた区分と、対価返還に必要な帳簿事項を残してください。
課税仕入れにする場合はインボイスが必要
売手が差額を買手等から受けた役務の対価、つまり課税仕入れとして処理する場合、仕入税額控除には原則として帳簿とインボイスの保存が必要です。
国税庁の案内でも、売手負担の振込手数料相当額を課税仕入れとして処理する場合は、金融機関や取引先から受領するインボイスが必要と明記されています。
買手が銀行から受け取った書類をそのまま売手の仕入税額控除に使えるとは限りません。立替金精算書、媒介者交付特例等を含む適切な方法を税理士へ確認します。
免税事業者・簡易課税でも記録は残す
仕入税額控除を直接計算しない事業者でも、請求額と入金額の差額、契約上の負担者、売掛金残高を正しく管理する必要があります。
課税方式の変更や将来の調査に備え、請求書、入金明細、差額理由、税区分、承認記録を保存します。
パターン別の仕訳例
以下は処理の考え方を示す税込の単純例です。税率別の内訳、消費税端数、会計方針は自社の設定に従います。
売上値引として処理する
請求額110,000円、振込手数料相当額550円、入金額109,450円の例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 109,450円 | 売掛金 | 110,000円 |
| 売上値引 | 550円 |
差額550円を元の売上に係る対価返還として記録します。税込1万円未満なら返還インボイスの交付義務免除を検討できます。
支払手数料の科目で売上返還として処理する
表示科目を支払手数料にする例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 109,450円 | 売掛金 | 110,000円 |
| 支払手数料(売上返還用) | 550円 |
通常の銀行手数料の課税仕入れコードと分け、売上返還用の補助科目・税区分で識別します。
課税仕入れとして処理する
買手から受けた役務の対価として処理するなら、支払手数料550円を課税仕入れとして記録し、必要なインボイス等を保存します。
仕訳の見た目は前例と似ますが、消費税上の性質と保存書類が異なります。勘定科目名だけを見て同じ処理と判断しないでください。
買手負担で請求額全額が入金される
請求額110,000円がそのまま入金された場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 110,000円 | 売掛金 | 110,000円 |
売手側に差額はありません。買手が銀行へ支払った手数料は買手側の取引です。
一部入金と振込手数料が同時にある
請求額110,000円に対し、今回の回収予定55,000円から手数料550円が差し引かれ、54,450円が入金された例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 54,450円 | 売掛金 | 55,000円 |
| 売上値引等 | 550円 |
この時点の売掛金残高は55,000円です。差額550円だけを残高として残すのではなく、今回回収分5万5,000円を消し込みます。
源泉所得税が差し引かれている
士業報酬や原稿料等では、振込手数料以外に源泉所得税が差し引かれることがあります。源泉所得税は売上値引や支払手数料ではなく、事業者側で仮払税金・事業主貸等の適切な科目を使います。
差額が数百円・数千円でも、支払明細で内訳を確認してください。



振込手数料、源泉所得税、値引きが混在すると、差額の合計だけでは判別できません。支払明細の内訳ごとに分けて消し込みます。
差額消込の実務手順
差額処理を担当者の推測に任せず、確認・承認・登録・照合の順に統一します。
1. 請求番号と入金明細を照合する
同額請求が複数ある場合は、振込名義だけでなく支払通知、請求番号、対象期間を確認します。取引先名の表記揺れはマスタで統一します。
2. 差額理由を分類する
差額コードを作ると月次確認がしやすくなります。
| 差額理由 | 主な処理候補 | 追加確認 |
|---|---|---|
| 振込手数料 | 売上値引、支払手数料等 | 契約、税区分、インボイス |
| 源泉所得税 | 仮払税金・事業主貸等 | 支払調書、税率 |
| 一部入金 | 売掛金残高を維持 | 次回入金日 |
| 返品・値引 | 売上返還 | 合意書、税率 |
| 相殺 | 相手勘定と相殺 | 相殺通知、契約 |
| 不明 | 仮受金等で一時保留 | 取引先照会 |
原因不明の差額を手数料へ入れると、費用と売掛金年齢表の両方が誤ります。
3. 税区分と証憑を確認する
売上返還なら元の売上税率、課税仕入れなら適格請求書等の要件を確認します。インボイス免除を使う場合も、帳簿へ対価返還の内容を記録します。
4. 売掛金全額と差額を同時に登録する
会計ソフトの「差額調整」「手数料」「値引」等の機能を使い、請求額と決済額の合計を一致させます。弥生会計の売掛金入力でも、製品別の差額処理を解説しています。
5. 月末に残高と請求一覧を再照合する
売掛金元帳、請求一覧、銀行入金明細を取引先別に突き合わせます。回収済み請求に550円などの小額残高が連続していれば、手数料差額の消込漏れを疑います。
- 同じ取引先に少額残高が複数残る
- 入金済み請求が未回収一覧へ残る
- 支払手数料が前月比で急増した
- 軽減8%と標準10%の税区分が混在した
- 原因不明差額を担当者が直接費用化した
会計ソフトで間違えやすい点
画面名称は製品・プラン・更新で変わりますが、会計上の確認点は共通します。
売掛金を直接減らすだけにしない
銀行明細から普通預金9万9,450円だけを登録し、残り550円を削除すると、仕訳の貸借や請求履歴が合わなくなることがあります。元の未決済取引へ入金と差額を紐付けます。
自動仕訳の税区分を確認する
「振込手数料」という名称から自動的に課税仕入れ10%が提案される場合があります。自社が売上返還として処理する方針なら、専用の税区分・補助科目へ直します。
一括入金を1件だけに充当しない
複数請求がまとめて入金された場合、対象請求すべてへ配分します。振込手数料をどの請求へ対応させるかも、継続したルールを決めます。
差額ルールを文書化する
金額が小さいほど担当者ごとの処理がばらつきます。次の内容を経理マニュアルへ残します。
- 負担者を確認する資料
- 売上返還・課税仕入れの採用方針
- 使用する勘定科目・補助科目・税区分
- 税率混在時の配分方法
- 証憑の保存場所
- 一定額以上・原因不明時の承認者



小額差額は1件ずつは目立ちませんが、残高照合を止める原因になります。取引先別ルールと専用コードを作ると月次締めが早くなります。
売掛金・振込手数料・インボイスのよくある質問
売掛金から振込手数料が引かれたときの仕訳は?
売手負担で売上値引とする一般例は「普通預金99,450円・売上値引550円/売掛金100,000円」です。支払手数料等で処理する方法もありますが、契約上の負担者と消費税上の区分を確認し、売掛金は請求額全額を消し込みます。
振込手数料は売上値引と支払手数料のどちらですか?
取引実態と会社の経理方針によります。売上代金の値引きなら対価返還、買手から受けた役務の対価なら課税仕入れ、立替なら立替精算として整理します。科目名だけでなく税区分と保存書類まで統一してください。
振込手数料に返還インボイスは必要ですか?
売手負担の振込手数料相当額を売上げに係る対価の返還等として処理し、その金額が税込1万円未満なら、返還インボイスの交付義務は免除されます。課税仕入れとして処理する場合のインボイス要件とは別です。
支払手数料で処理するとインボイスが必要ですか?
消費税法上も課税仕入れとして処理するなら、仕入税額控除には原則として帳簿とインボイスの保存が必要です。経理科目を支払手数料としつつ消費税上は売上返還とする方法もあるため、税区分を確認してください。
振込手数料の差額だけ売掛金に残してもよいですか?
追加回収する予定がある部分入金なら残して構いません。売手負担で回収完了なら、差額を売上値引・支払手数料等へ振り分け、請求額全額を消し込みます。小額残高を放置すると未回収一覧が不正確になります。
振込手数料を買手が勝手に差し引いた場合はどうしますか?
契約と請求条件を確認し、合意がなければ取引先へ差額の支払いを求めるか、今後の負担方法を協議します。取適法の対象取引では一方的な控除が問題になる可能性があるため、対象範囲を確認してください。
まとめ
売掛金から振込手数料を差し引かれたら、最初に契約上の負担者と差額理由を確認します。回収完了なら、普通預金への入金額と差額を合わせて請求額全額を消し込みます。
インボイス制度では、売上値引等の対価返還と課税仕入れを分けてください。税込1万円未満の返還インボイス交付義務免除は便利ですが、すべての振込手数料処理を無条件に免除する制度ではありません。科目、税区分、証憑、承認ルールをそろえ、月末に売掛金残高を再照合します。

