本記事は広告・PRを含みます。掲載する割合・件数は調査機関ごとに対象、母数、定義が異なります。個別企業の支払能力や倒産可能性を示すものではありません。自社の資金繰りや事業再生、法的整理については、金融機関、税理士・公認会計士、弁護士等へ相談してください。
黒字倒産の割合は、最新の直接的な参考値では35.7%です。東京商工リサーチ(TSR)が2025年に倒産した企業のうち、3期連続の財務データを保有する794社を調べたところ、倒産直前の最新期で最終赤字だった企業は64.3%でした。そのため、残りの35.7%が黒字だったと計算できます。
ただし、これは2025年に倒産した全1万300件の割合ではありません。財務データを確認できた794社に限る参考値です。
一方、検索結果で見かける「49.1%」は黒字倒産率ではありません。2025年に休廃業・解散した企業のうち、直前期が黒字だった割合です。倒産と休廃業・解散は別に集計されています。
2025年の参考値は、倒産企業の財務分析では黒字35.7%、休廃業・解散企業では黒字49.1%です。母数が違うため混ぜて使えません。
この記事では、黒字倒産の割合と件数について最新資料をもとに整理し、49.1%との違い、統計を読むときの注意点、自社で確認したい数字まで解説します。黒字倒産の仕組みを先に知りたい場合は、黒字倒産はなぜ起こる?も参考にしてください。
- 35.7%:2025年倒産企業のうち、TSRが3期連続の財務データを保有する794社で計算した黒字割合
- 1万300件:TSRが集計した2025年の全国企業倒産件数(負債総額1,000万円以上)
- 49.1%:TDBが集計した2025年の休廃業・解散企業の直前期黒字割合
黒字倒産の割合は35.7%が最新の参考値
東京商工リサーチの2025年「倒産企業の財務データ分析」では、2025年に倒産した企業のうち、同社が3期連続の財務データを保有する794社を分析しています。
倒産直前の最新期で最終赤字だった企業は64.3%でした。黒字企業の割合を赤字企業率の反対として計算すると、次のとおりです。
“text
100%-64.3%=35.7%
“
したがって、この調査対象794社では、最新期の最終損益が黒字だった企業の割合は35.7%です。
「黒字倒産は35.7%」ではなく、「2025年倒産企業のうち財務データを確認できた794社では35.7%」と読むのが正確です。
全国の倒産すべてを調べた割合ではない
2025年の全国企業倒産は1万300件ですが、財務データ分析の対象は794社です。全倒産企業について、倒産直前の同じ時点・同じ会計基準の最終損益を確認した調査ではありません。
| 項目 | 2025年の数値 | 対象 |
|---|---|---|
| 全国企業倒産件数 | 10,300件 | 負債総額1,000万円以上の倒産 |
| 財務データ分析対象 | 794社 | TSRが3期連続の財務データを保有する倒産企業 |
| 対象794社の最終赤字率 | 64.3% | 倒産直前の最新期 |
| 対象794社の黒字割合 | 35.7% | 100%から64.3%を差し引いた値 |
794社は倒産1万300件の一部です。業種、規模、決算資料の取得状況等による偏りがあり得るため、35.7%を全国の確定値として扱わないでください。
黒字の時点と倒産した時点にも差がある
「最新期が黒字」でも、決算日から倒産までの間に損失や資金流出が発生していることがあります。売掛金の回収不能、在庫評価損、借換停止、大口取引先の倒産等により、申立時点の財務状態は変わります。
直前決算が黒字だったことと、倒産時点でも利益や純資産が残っていたことは同じではありません。実際の企業事例は、黒字倒産した企業3社の事例で決算期と法的手続の時点を分けて解説しています。
49.1%は黒字倒産率ではなく黒字の休廃業・解散割合
2026年版中小企業白書の概要には、2025年に休廃業・解散した企業のうち、黒字だった割合が49.1%と示されています。
元資料である帝国データバンクの2025年「休廃業・解散」動向調査では、次の数字が公表されています。
| 項目 | 2025年の数値 |
|---|---|
| 休廃業・解散件数 | 67,949件 |
| 直前期が黒字だった割合 | 49.1% |
| 資産超過だった割合 | 63.4% |
| 黒字かつ資産超過だった割合 | 15.2% |
ここでいう休廃業・解散は、法的整理による倒産を除き、企業活動の停止や解散が確認された企業です。後継者不在、経営者の高齢化、将来見通し、事業承継の不成立等により、支払不能になる前に自主的に事業を終える企業も含まれます。
49.1%は「倒産した企業の約半数が黒字」という意味ではありません。黒字のまま休廃業・解散した企業を含む割合です。
2024年の51.1%も同じく黒字廃業側の数字
2025年版中小企業白書では、2024年の休廃業・解散企業の黒字割合が51.1%と示されていました。この数字も黒字倒産率ではありません。
2026年版では、同じTDB系統の集計で2025年の割合が49.1%へ低下しています。年度が新しくなっただけでなく、いずれも休廃業・解散企業の直前期損益を見た数字です。
検索結果やSNSで「日本の倒産の半分が黒字」と書かれていても、出典が休廃業・解散調査なら、黒字倒産率として引用するのは不正確です。
黒字倒産・黒字廃業・倒産・休廃業の違い
似た言葉を表で整理します。
| 言葉 | 主な意味 | 支払不能が前提か | 統計上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 倒産 | 債務の支払不能や事業継続困難となり、法的整理・銀行取引停止等へ進む状態 | 関係する | 調査機関により対象手続・負債額基準が異なる |
| 黒字倒産 | 直前期等が黒字でも、支払日に使える現金が不足して倒産すること | 関係する | 法令上の単一分類ではなく、黒字と判定する時点も要確認 |
| 休廃業・解散 | 法的整理によらず企業活動を停止、または解散すること | 前提ではない | 調査機関によりデータベース・確認方法が異なる |
| 黒字廃業 | 黒字または資産超過の状態でも自主的に事業を終えること | 前提ではない | 後継者不在等の理由も含み、黒字倒産とは別 |
黒字倒産は現金不足による事業継続困難、黒字廃業は黒字でも事業を終える経営判断です。結果として会社がなくなる点は似ていますが、原因と手続が異なります。
黒字と資産超過も同じではない
黒字は一定期間の収益から費用を差し引いた損益の状態です。資産超過は、ある時点で資産が負債を上回る状態です。
黒字でも過去の累積損失が大きければ債務超過の場合があります。反対に、赤字の年でも過去に蓄えた純資産が厚ければ資産超過を維持する場合があります。
さらに、黒字かつ資産超過でも、預金が少なく、売掛金や在庫の現金化が間に合わなければ支払いができないことがあります。
黒字倒産の件数を1万300件から単純計算できない理由
2025年の倒産件数1万300件へ35.7%を掛けると、約3,677件になります。しかし、この数字を「2025年の黒字倒産件数」として公表することはできません。
割合の母数が794社だから
35.7%は、財務データを3期連続で確認できた794社の割合です。1万300件全体から無作為抽出したと明記された標本ではありません。
財務情報を取得しやすい企業と、取得できない企業では、法人形態、規模、業種、倒産手続等が異なる可能性があります。母数が違う割合を全件へ掛けると、実態からずれるおそれがあります。
倒産の集計基準があるから
TSRの2025年全国企業倒産は、負債総額1,000万円以上が対象です。負債1,000万円未満の倒産や、集計対象外の事業停止まで含む数字ではありません。
また、調査機関によって法的整理のみか、銀行取引停止や内整理を含むかなどが異なります。同じ「倒産件数」でも、対象を確認する必要があります。
最新決算と倒産日の間に時間差があるから
決算書の黒字は過去の一定期間の結果です。倒産直前までの資金移動を毎日反映するものではありません。
売掛金の貸倒れや在庫処分損が決算に反映される前に倒産した企業もあれば、倒産前に損失処理を行い赤字になった企業もあります。黒字倒産件数を比べるには、どの時点の損益で黒字と判定するかをそろえる必要があります。
全国の黒字倒産件数は、倒産全件と同じ基準の損益データが公表されていない限り、単純な掛け算では求められません。
2023~2025年の倒産企業の黒字割合推移
TSRの各年の財務データ分析から、最終赤字率を100%から差し引いて黒字割合を計算すると、次のようになります。
| 倒産年 | 財務分析の対象 | 最終赤字率 | 黒字割合(計算値) |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 586社 | 68.0% | 32.0% |
| 2024年 | 735社 | 66.2% | 33.8% |
| 2025年 | 794社 | 64.3% | 35.7% |
出典は、TSRの2023年調査、2024年調査、2025年調査です。
対象企業数が毎年異なるため、厳密な同一母集団の時系列比較ではありません。ただし、直近3年の財務データ保有企業では、倒産企業の約3分の1が最新期黒字だったことが分かります。
黒字割合だけで倒産リスクは判断できない
2025年調査では、倒産企業の71.1%が最新期で債務超過でした。また、有利子負債構成比率は倒産企業70.2%に対し、生存企業27.6%と大きな差がありました。
利益だけでなく、純資産、借入依存、返済額、現預金、売掛金・在庫の回転をあわせて見る必要があります。
中小企業で割合を見るときの注意点
2026年版中小企業白書は、2025年倒産1万300件のうち、従業員10人未満の企業が9割近くを占めると整理しています。小規模企業の倒産が多いことは確認できますが、これをそのまま「中小企業の黒字倒産率」と読み替えることはできません。
企業規模別の黒字割合は別に必要
中小企業だけの黒字倒産割合を出すには、少なくとも次の情報が必要です。
- 倒産企業のうち中小企業に該当する企業数
- その中で倒産直前の損益を確認できる企業数
- 同じ時点・同じ基準で黒字だった企業数
- 法人・個人事業主、業種、負債額基準の範囲
公開資料にこれらがそろっていない場合、「中小企業の何%が黒字倒産」と断定しない方が安全です。
企業数全体に対する発生率とも違う
倒産企業の中で黒字企業が占める割合と、黒字企業全体のうち倒産した企業の割合は別です。
たとえば、倒産企業794社の35.7%が黒字だったとしても、「黒字企業の35.7%が倒産する」という意味ではありません。分母を取り違えると、倒産リスクを大幅に誤解します。
黒字でも倒産する理由
黒字割合がゼロにならないのは、利益と現金の動く時期が一致しないためです。
売掛金が入金される前に支払いが来る
掛け売上は売上・利益へ計上されても、入金日までは現金になりません。仕入代金、人件費、外注費、税金、借入返済が先に来れば、黒字でも預金が不足します。
支払期日を過ぎた売掛金は、売掛金滞留とは?で原因と確認方法を整理しています。取引先が支払わない場合は、売掛金を払ってくれないときの回収手順も確認してください。
在庫や設備へ現金が固定される
在庫や設備は資産ですが、給与や返済にそのまま使えません。売れるまでの期間が延び、値下げや処分損が生じれば、帳簿価格どおりの現金を回収できないこともあります。
在庫が資金繰りを悪化させる理由を確認し、在庫回転期間と処分後の手取りを見積もります。
借入元金の返済は費用にならない
借入元金の返済は、損益計算書上の費用ではありません。そのため利益が出ていても、元金返済で預金は減ります。
返済予定を月別に並べ、営業で生み出す現金と比較してください。借換を前提にしている場合は、借換ができないケースの資金繰りも作ります。
成長に必要な運転資金が増える
売上が伸びると、入金前に仕入れ、人件費、外注費、在庫が増えることがあります。売上成長が大きいほど、先に必要な現金も増えます。
売上債権と棚卸資産から仕入債務を差し引く基本的な考え方は、運転資金の計算方法で確認できます。
黒字倒産を防ぐには、利益率だけでなく「いつ現金になるか」と「いつ支払うか」を日付で管理します。
自社で確認したい7つの数字
統計上の割合より、自社の資金が尽きる日を早く見つけることが重要です。
1. 現預金の最低残高
現在の預金残高だけでなく、今後13週間の入出金を週別に並べ、最も残高が低くなる日を確認します。未確定の売上や融資を確定入金と同じ扱いにしません。
2. 支払期日を過ぎた売掛金
売掛金を取引先別・支払期日別に分け、期日超過額と超過日数を集計します。月末残高だけでは、正常な売掛金と回収遅延を区別できません。
3. 売掛金回転期間
売掛金が月商の何か月分あるか、前年より回収が遅くなっていないかを確認します。売上が伸びていても、売掛金がさらに速く増えている場合は注意が必要です。
4. 在庫回転期間
在庫が何日分あるか、長期間動かない在庫はいくらかを把握します。帳簿価格だけでなく、処分価格、販売までの期間、保管費も確認します。
5. 12か月以内の借入元金返済額
元金返済を月別に並べ、営業キャッシュフローと比較します。毎月の利益が返済額を上回っていても、売掛金や在庫へ資金が固定されれば不足することがあります。
6. 買掛金・税金・給与の支払予定
支払先別の合計だけでなく、支払日ごとに並べます。納税、賞与、年払い保険、設備代金など、特定月に集中する支出を漏らさないでください。
7. 資金不足が始まる日
入金予定と支払予定を重ね、残高が必要運転資金を下回る日を特定します。不足が見える前に、回収交渉、支払条件の相談、在庫圧縮、融資相談等へ着手します。
資金不足が近い場合は、資金繰りが苦しい時に確認する順番も参考にしてください。
全国平均を知るだけでは自社の倒産を防げません。自社の最低残高と支払日を把握することが先です。
黒字倒産の割合・件数に関するよくある質問
黒字倒産の割合は何%ですか?
最新の直接的な参考値として、TSRの2025年倒産企業の財務分析対象794社では35.7%です。最終赤字率64.3%を100%から差し引いて計算します。ただし、全国の倒産1万300件すべてを調べた割合ではありません。
49.1%は黒字倒産の割合ではないのですか?
違います。49.1%は、2025年に休廃業・解散した企業のうち、直前期が黒字だった割合です。法的整理等による倒産とは別の母集団です。
2025年の倒産件数は何件ですか?
TSRの全国企業倒産集計では1万300件です。負債総額1,000万円以上の倒産が対象で、調査機関や集計基準が違えば件数も異なる場合があります。
2025年の黒字倒産件数は何件ですか?
全国全件の確定値は、今回確認した公開資料からは算出できません。35.7%の母数は財務データを3期連続で確認できた794社なので、1万300件へ単純に掛けないでください。
黒字倒産と黒字廃業は同じですか?
同じではありません。黒字倒産は、直前期等が黒字でも支払資金が不足して事業継続が困難になることです。黒字廃業は、黒字でも後継者不在等を理由に自主的に事業を終えることを指します。
黒字なら倒産しにくいですか?
赤字が続く企業より収益面では余裕がありますが、黒字だけで安全とは言えません。現預金、売掛金・在庫の回転、借入返済、支払期日をあわせて確認します。
黒字倒産を防ぐには何を見ればよいですか?
13週間の資金繰り、現預金の最低残高、期日超過売掛金、売掛金・在庫の回転期間、12か月以内の元金返済、税金・給与等の支払予定を確認します。
まとめ|黒字倒産率と黒字廃業率を分けて読む
黒字倒産の最新の参考値は、TSRが2025年倒産企業のうち財務データを3期連続で保有する794社を調べた結果から計算できる35.7%です。全国の倒産全件を対象にした確定率ではありません。
一方、49.1%は2025年に休廃業・解散した企業の直前期黒字割合です。黒字倒産率ではありません。
- 倒産企業の財務分析:対象794社、黒字35.7%
- 全国企業倒産:1万300件
- 休廃業・解散:6万7,949件、そのうち直前期黒字49.1%
割合を引用するときは、母数、対象年、倒産の定義、黒字と判定した時点を確認してください。
経営では、全国平均より自社の現預金がいつ不足するかを先に確認します。利益、売掛金、在庫、借入返済、支払予定を資金繰り表へ反映し、不足が見える段階で金融機関や専門家へ相談してください。
参考資料
- 東京商工リサーチ「2025年の倒産企業は、7割が“債務超過”」(2026年8月24日確認)
- 東京商工リサーチ「2025年の全国企業倒産1万300件」(2026年8月24日確認)
- 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年8月24日確認)
- 帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」(2026年8月24日確認)
